■子どもを持たない選択も 習近平指導部は危機感

2021年、中国の出生数は建国以来最少の1062万人となりました。価値観の多様化により、子どもはいらないと考える人も増えています。


上海に住む30代会社員
「仕事が忙しく、日々プレッシャーもあるので、子どもの世話をしていたら、仕事がうまくいかなくなるのが心配です」

中国政府は3人目の出産に補助金を出すなど対策に乗り出していますが、その効果は表れていません。急速に進む少子高齢化は経済を押し下げる要因にもなるため、習近平指導部も危機感を抱いています。

習近平国家主席
「出産支援政策体系を確立し、人口の高齢化への積極的対応という国家戦略を実施する」


■“世界の産業の崩壊”中国の少子高齢化が及ぼす影響とは

世界でも例をみない規模で進行する14億人の少子高齢化。専門家はどうみているのでしょうか?

ソ連崩壊を予測したことでも知られる、世界的に著名な歴史人口学者エマニュエル・トッド氏は、これは、中国国内のだけの問題ではなく全世界に大きな影響を及ぼしかねないと指摘します。

歴史人口学者 エマニュエル・トッド氏
「世界の工業製品の4分の1以上を生産している中国の人口減少は、世界の産業の崩壊を意味するのです」


トッド氏によれば現在、「世界の工場」の役目を担っている中国の労働力人口が減少すれば、メイドインチャイナの製品が高騰することにつながり、世界経済のバランスが崩れかねないといいます。また、中国に工場を移すことで労働力を確保してきた日本経済はより深刻な影響を受けることになると警鐘を鳴らします。


歴史人口学者 エマニュエル・トッド氏
「日本からすると、『人口の減少により中国が世界を支配する勢力になることはない』ともいえます。なので、地政学的には日本にとっていいかもしれませんが、経済的には恐ろしいことになります」

14億人の少子高齢化は中国だけの問題にとどまらず、今後、世界中が向き合わなければならない課題となりそうです。