急速な「少子高齢化」が進む中国。現在は世界最多14億人の人口を抱えていますが、来年にはインドに抜かれ、世界第2位になるという調査もあります。危機感が高まる中、世界的に著名な歴史人口学者エマニュエル・トッド氏は中国国内だけの問題ではなく、全世界に大きな影響を及ぼしかねないと指摘します。

■“日本式”サービスが人気の中国、背景に急速な高齢化

中国の高齢者の間でいま人気のサービスがあります。

介護スタッフ
「湯加減はいかがですか?」
利用者
「大丈夫です」


“日本式”の入浴介護です。中国では自宅に浴槽がない家が多く、入浴介護は一般的ではありません。そのため、入浴介護が発達した日本ならではの心遣いやノウハウが高齢者の心をつかんでいるといいます。

利用者の妻
「『お風呂に入るよ』と言うと、とても喜びます。入浴サービスは夫の心と体にとても良いです」

介護サービスの需要が高まっている背景には急速に進む高齢化があります。約3年後、中国の60歳以上の人口は3億人を超える見通しです。

高齢者をターゲットにした住宅の売れ行きも好調です。

パナソニック中国・北東アジア社 WST推進室 柳海清室長
「座ってシャワーが出来るので体の負担が非常に少ないです」


足が不自由な人のための浴室やトイレの際に自動で尿検査ができるなど健康状態を常にモニタリングしてくれる設備もあります。

■ひとりっ子政策で崩れた“子どもが親の介護”の伝統

この地区には若いうちから住む人も。家族と共に去年から暮らす女性は老後に備え、家は買ったものの…

家族と共に住む30代女性
「お金は老後の基礎なので、計画を立てて資金を貯めていきたいです」


口にしたのは老後の不安です。中国では全国的な介護保険制度が整備されていないため、介護サービスを利用できるのは富裕層に限られています。制度が整備されてこなかった背景には伝統的に「子どもが親の世話をするのが当然」という考えが根強くあるためだといいます。


ただ、その世話をするはずの子どもの数は、人口抑制のための国策として続けてきた「一人っ子政策」の影響もあり、急速に減っているのです。2016年、中国政府は「一人っ子政策」を撤廃しましたが、少子化に歯止めはかかっていません。

孫と同じ地区に住宅を購入した60代の祖母も2人以上の子どもを持つことには抵抗感があるといいます。

60代祖母
「2人目3人目となると生活の質も体力も追いつきません。子どもを教育するためのコストも非常に高くつきます」


30代母親
「私たちの世代は、間違いなく老後を子どもに期待できなくなっています」