■「この戦争は第二次世界大戦以降最大。そういう戦争が簡単に終わるはずがない」

前出のシンクタンク事務局長は言う。「プーチン大統領はウクライナ側の条件ではなく自分の条件で危機を終わらせたい。紛争は終わらせたいが、妥協する気は全くない」
自分の条件とはクリミアはもちろん、併合した4州もロシアの一部とすることに他ならない。当然ウクライナが受け入れるはずもなく、西側諸国も認めるわけがない。つまり停戦合意などあり得ないのだ。では、この戦争の終わらせ方とは一体どんな形があるのだろうか?

防衛研究所 高橋杉雄 研究室長
「この戦争は停戦交渉でしか終わらないんです。つまり、アメリカがフセイン政権を物理的に打倒してイラク全土を占領したように、ロシアがウクライナ全土を制圧、みたいなことはもはやあり得ない。だから何らかの協定で終わるとするなら終わる。ただ今のところお互いの目標があまりにもかけ離れている…。犠牲もたくさん出ている。唯一協定に辿り着くとしたらお互いに消耗しながら何年も戦争を続けて、このまま続くよりは妥協してでもやめた方がいいやってなった時だけ」
といって高橋氏は朝鮮戦争を例に挙げた。

1950年に始まった朝鮮戦争はまさに南北が攻勢と劣勢を繰り返し、3年にわたる消耗戦を続けた。北を援護した中国とソ連、南を支援したアメリカと連合国、双方が疲れ果てた末に休戦協定が結ばれたが、韓国は納得せずサインしなかった。そして、緊張状態は今も続き、いまだに終戦ではなく休戦中だ。



防衛研究所 高橋杉雄 研究室長
「ウクライナ戦争って、参加兵力両軍で100万超えている。戦場も広くてロシアが占領している部分だけでも朝鮮半島より広い。もはやこの戦争は第二次世界大戦以降最大の戦争なんです。そういう戦争が簡単に終わるはずがない。(中略~何年か消耗戦が続いた末に)妥協点としては、ウクライナはいくつかの州をあきらめる。代わりにロシアはウクライナのNATO加盟を認める、みたいなロシアもウクライナも両方とも失う、という形の和平っていうのはあり得る」

■「プーチンがあまりにも汚い戦争をやってる」

朝鮮戦争を例に挙げて消耗戦の末に妥協点を探る以外停戦の道はないという見方が現実的なようだ。しかし、番組のニュース解説、堤氏は今回の戦争は朝鮮戦争よりも厄介だと話す。



国際情報誌『フォーサイト』元編集長 堤伸輔氏
「朝鮮戦争と今回の戦争の違い、いっぱいあるんですが最大の違い、それは、ロシアが、あるいはプーチンがあまりにも汚い戦争をやってること。民間人に対する攻撃、拷問、虐殺。これは中東戦争なんかと比べても程度が激しすぎる。これにウクライナの国民感情は、例えば先ほど出たNATOに加盟するかわりに一部の州を割譲するとかで収まるかどうか。収まらないかもしれない。それが他の戦争との違いですよね。」
戦争の長期化は避けられない見通しだ。

先日来日したウクライナ議員団は“最悪のこと”として各国が戦争疲れで支援を弱めることだと話した。まもなくウクライナは寒さの厳しい季節を迎える。

BS-TBS 『報道1930』10月18日放送より)