急速に改善する日中関係 背景にはやはりトランプ大統領
Q去年秋ぐらいから急に日中間の往来が増えた印象があるんですがなぜですか?
金杉大使
去年は日中間のいろんな交流が再活性化された年だと思います。日本からは日中友好議連や経済同友会、関西経済団体が5年ぶり8年ぶり、12年ぶりということで来られましたし、中国の地方の指導者が日本にたくさん行かれていたので、日中関係が少し活気を取り戻してきたのが昨年なのかなと思います。

Q何かきっかけはあったのですか?
金杉大使
中国の外交にとって一番大事なのはアメリカとの関係を管理していくことだと思うんですね。トランプ大統領が出てくるのが見込まれる中で、なかなか米中関係の管理が難しい。そうであればその他の主要国との関係を安定化させていこうということで、一番最初に始まったのがオーストラリアであり、ヨーロッパであり、 日本もそうですし、最近はインドとの関係も非常に安定の方向に舵を切っていると思いますので、そういう大きな流れの中で出てきている話じゃないかなと思います。
Q往来が頻繁になるのはいいことなんですが、日中間は懸案も多くて、水産物の解禁問題や日本人の安全の問題などがありますが、大使として今心を砕いていることはどんなことでしょうか?
金杉大使
去年が交流が再活性化した年だとすれば今年は懸案や課題をひとつでもふたつでも解決していく。さらには日中で協力できる話があれば協力を進めていくという、具体的に日中関係が両方の国民にどういうふうに利益をもたらしてるのかっていうのを見てもらう、それが大事だと思うので、課題にしろ懸案にしろ協力にしろ、少しでも進めばいいなと思っています。
Q昨年は深セン、蘇州で悲しい事件もありましたけれども、日本人の安全は大使にとって大切な仕事と思いますがどう受け止めていますか?
金杉大使
日本人の安全安心と日系企業支援というのが大使館の最も重要な業務のひとつだというのは我々一貫して言っているので、蘇州や深センの事案はあってはならない事件だったと思います。本当に残念です。
Q事件の影響もあって中国駐在を希望しない人が増えたり、20年ぶりに在留邦人が10万人を切ったり、北京にいる日本人も5000人を割ったという話もありますが、どのように受け止めてますか。
金杉大使
それはもう率直に受け止めるしかないと思うんですね。 ただ今ちょうど年度が変わるところで日本に帰国する人がいるんですけれども、そういう人たちと話をしていると、中国に来る前はすごく緊張していたけれども、来て本当に楽しかった、家族、お子さんも含めてまた中国に帰ってきたいっていう人が結構な数いるんです。ですから、イメージと実態がかなり違うところがあるのかなと思います。
ある人が言っていましたが、お子さんに靴下を履かせずに歩いていたら、おばちゃんが寄ってきて「なんで靴下履かせてないんだ」と怒られたとか、あるいは電車の中で子どものために席を譲ってくれたとか、そういう話っていうのは、あまたあると思うので。 実態とイメージの乖離っていうのをどうやって埋めていくのかは我々に課されている課題かなと思います。
Qそれは実は我々メディアに課されている課題でもありまして、テレビのニュースですと中国の政治面ばかりが前面に出るので、中国って難しい国、怖い国なんじゃないかっていう印象ばかりが伝わってしまうんですが、実はこのポッドキャストを始めたのも、電車の中で声かけてくるようなおせっかいで優しい中国の人の姿が少しでも伝わるといいなと思って始めたんですね。
金杉大使
多分どこの国にもその国に住んで生活することのリスクってあると思うんですね。中国には中国の、アメリカはアメリカ、ヨーロッパはヨーロッパ、そのリスクをしっかり認識した上でそれに適切に対応していくっていうことが大切で、それは中国だけではなくて日本もそうだし、世界のどこにいても同じだと思います。