アメリカ自動車関税 正式に発表 日本への影響 甚大の恐れ

関税の話はどこまで進んでいるのか。中国・カナダ・メキシコへの関税と、鉄鋼・アルミニウムへの25%の関税が発動されている。さらに、ベネズエラから石油・天然ガスを購入している国に25%で自動車に25%の追加関税を課すということが発表された。

次は、自動車関税について。全ての国に対して、完成車には25%の追加関税で5月3日までにエンジンなど基幹部品にも関税を課すとしている。またカナダ・メキシコについては完成車はアメリカ製品の割合に応じ税率を調整していき、部品については当面免除だが、今後はアメリカ製部品の割合で税率を調整していく。
――いきなり、自動車関税の発表になった。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
世も末だ。日本経済にとって大ダメージ。株価の下落がさらに進む可能性がある。恐怖すら感じる。

日本からの自動車輸出台数は、昨年2024年、130万台余りが直接アメリカに輸出されている。また、メキシコから87万台、カナダからも日系メーカーの車両がアメリカに輸出されている。この数は、日米摩擦が最も激しかった時期の230万台という自主規制枠より少ないが、それでも相当な台数が輸出されている。

各メーカーの生産状況を見てみる。トヨタはアメリカでの現地生産が56%、日本からの輸出が20%、残りがメキシコやカナダである。ホンダと日産もアメリカでの現地生産が6割を超えている。一方、マツダやスバルは半数近くを日本から輸出している。現地生産への依存度が高い企業と、輸出に依存する企業が存在する。中堅メーカーほど打撃が大きい。
――輸出に依存する、中堅メーカーほど打撃が大きいか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
この2日間の株価下落を見ると、下落幅が大きい企業ほど赤(日本からの輸出が多い)で示され、青(現地生産依存度が高い)が多い企業も下落を免れない。アメリカ経済全体が関税による需要縮小で影響を受けるため、現地生産を行う企業もダメージを避けられない。
――主要部品にも25%の関税が課されるため、日本から輸入していれば企業は当然影響を受ける。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
アメリカ企業も、現地生産を行っている日本企業も共にダメージを受ける。

次に、日本経済における自動車産業の重要性をみる。アメリカへの輸出額のうち、自動車が28%、自動車部品が5%で、合計3分の1を占める。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
これは大きなインパクトである。自動車1台が売れなくなると、家電製品や素材よりも裾野が広い分、影響が拡散する。割合は3分の1だが、拡散すればさらに大きなダメージとなる。人口減少の日本にとって、輸出が打撃を受けることは甚大なダメージだ。
――自動車産業は500万人の雇用を支えている。影響はあるか?
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
国内自動車メーカーがリストラで雇用者を減らすことはないと思うが、消費者のマインドを通じて悪化が内需に広がる可能性は高い。
昨年2024年、不正問題で工場が停止し、生産ができない状況になっただけでGDPが大きく影響を受けた例もある。それだけ経済への影響が大きい。理屈では関税分を価格転嫁するのが正当であり、フェラーリのようすぐに転嫁できる企業もある。
――しかし、多くの日本メーカーは慎重だ。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
関税率引き上げ後、メーカーは関税分を全部引き上げられずに、半分や7割を段階的に引き上げ、2年程度かけて進めていく。そのため、海外事業の採算は厳しくなる。
各自動車メーカーは、すぐには価格を上げられず、様子を見ながら徐々に進める形となり、その間はメーカーが負担する。負担分は日本の生産工程で吸収される。
――各社の収益性や下請けまで含めた悪化を招く。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
部品メーカーにも悪影響が及ぶため、裾野が広い分、収益悪化が株価下落に波及する。
――各社の収益性や下請けまで含めた悪化を招く。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
部品メーカーにも悪影響が及ぶため、裾野が広い分、収益悪化が株価下落に波及する。
――現地生産の拡大はどうか。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
現地生産を拡大すれば良いという意見もあるが、新しい投資はすぐにはできない。他国も関税を課されるため、現地生産を増やすと雇用の奪い合いや素材価格の上昇が発生し、アメリカ事業の採算を悪化させる懸念がある。
――(トランプ政権中の)3~4年のために新工場を作るのは現実的ではない。日本は80年代の貿易摩擦以来、相当な投資を現地で行っている。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
アメリカで既に320万台を現地生産している。韓国と異なり、今大幅に増やすのは難しい。非常に自動車メーカーは苦しい。

市場はトランプ関税で混乱し、悲鳴を上げている。当初、貿易摩擦がここまで激化するとは予想していなかった。
――市場の反応と今後のシナリオはどうか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
トランプ氏は自分が乗る橋を揺らし、壊そうとしているが、どこかで止める可能性がある。超楽観的なシナリオでは、1月20日の就任から4月29日の就任100日目までが嵐のピークで、5月にはマイルドになるかもしれない。しかし、私はそれが難しいと考える。年末に法人税減税が切れ、その原資を稼ぐため刺激的な政策を続ける可能性がある。債務上限問題が8~9月に佳境を迎えると、そこまでは減税の原資を稼ぐために、刺激的な政策を行うのではないか。
――減税や規制緩和で、ビジネス界の支持を得て中間選挙につなげる流れだったが、後ずれしている。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
どこかでハンドルを切ると思うが、切りそうもないので、橋全体が崩落する懸念がある。
(BS-TBS『Bizスクエア』 3月29日放送より)