■価値観の変化に対し 蓄積していた不満が一気に爆発か

小川彩佳キャスター:
今回のデモは若者や女性の参加が目立つということですが、価値観が変わってきているということでしょうか?


中東調査会 青木健太研究員:
1979年のイラン革命から43年を経て若者や女性の価値観が徐々に変化していると思います。8月に4年ぶりにイランに現地調査に行ったが、ヒジャブを頭に被らずに肩にかけるだけの若い女性が特に北部、テヘランで多く見られました。過去には髪を少し見せるくらいの女性は多くいましたが、完全にというのは少なかった。その意味では特に都市部で変わってきていて、それを道徳警察が厳しく取り締まる事案が増えているということも仄聞していましたので、そういった違和感を感じていた中で、9月16日のアミニさんの死亡事件を受けて抗議デモが広がっていったということになります。


国山ハセンキャスター:
デモの長期化の理由について青木さんは「女性や若者の蓄積した不満が爆発した」と見ています。

【蓄積していた不満】
・ヒジャブ着用義務に中産階級の若者が反発
・2019年のガソリン値上げを受けたデモで暴力的な弾圧。数百人が死亡
・2021年の大統領選で投票の自由意志が奪われた


ヒジャブの着用義務以外にもずっとたまっていた体制側への不満が一気に噴き出した形なんでしょうか?

中東調査会 青木健太研究員:
抗議デモのスローガンを見てみると、「女性」「人生」「自由」ということを叫んでいる。あるいは「独裁者に死を」ということを叫んでいる。やはり女性が中心になっていることが今回のデモの大きな特徴。また、「自由」という言葉が入っていることが今回の抗議デモの参加者が求めていることを象徴しているように思います。


さらに言えば、アメリカの経済制裁によって経済状態が苦しくなっていて、経済的困窮も背景にあると思います。

■体制側は強固な姿勢 収束には長期化も?

小川キャスター:
今回のデモに対してイランの最高指導者・ハメネイ師は「デモを鎮圧する治安部隊の全面的支持」を10月3日に表明しています。


このデモ、いつ収束するといえるんでしょうか?

中東調査会 青木健太研究員:
現段階で長期的見通しは難しいが、私は長引くと見ています。反体制側に統一した指導者が存在しないということで、体制側からしてみれば対話をする相手がいないという状況にある。当初は大規模な活動でしたが、小規模なグループで散発的に行われることが全国各地に広がっていったという状況なので、なかなか収束に結びつけることが難しい


今のイランの体制は宗教界や治安機関によって支えられているので、イスラームに基づく統治ということに関して、妥協するということが体制の基盤を危うくすることになりますので、融和策をとることも難しい。なかなか早期に収束することは見通せない状況だと思う。