「もう無理だよ」
直後、「母親の安全を守る」と、静岡県外に暮らす男の子どもが妻を引き取り、男の独り暮らしが始まった。
「家族に会いたい」
「戻ってきてほしい」
男は1人になってすぐ、近隣の人たちに、耳が遠い自分の代わりに家族に電話して欲しいと何度も頼んだそうだ。
しかし、家族は住民から連絡を受けても、男に会いに来ることはなかったという。
男は、米の炊き方がわからず、ゴミの出し方がわからず、風呂の沸かし方がわからなかった。

次第に、周りの住民や行政職員に対し、自殺をほのめかすようになり、そして、実行した。
独り暮らしが始まってから放火するまで、1か月余り。
事件前日に、被告の家族に電話をかけていた住人がいた。
「もう、無理だよ。来てよ…」