「全部やってくれると思ったら大間違い」
「(男の)家族がもう電話も出ない。ガチャって切られるのは、(別の事案で)何度も経験済みなので。それでも、実際に何かできるのは、家族なので。病院や施設に入るのを嫌がっている本人の腕を、我々は引っ張れない」
男の様子が落ち着いてきたということで、訪問のペースを徐々に回数を減らしていた9月末、委託職員が、男が自殺をほのめかす言葉を聞いたそうだ。
住民にかけた言葉についてはー。
「『怖い』とおっしゃる住民の方がいらっしゃったこともあり、また、住民の方の負担や罪悪感を生まないためにも、『こちらで頑張ります』という意味で発言した」
「本人や住民を見捨てているようにとらえられる、誤解を招く言葉選びをしてしまったことは反省している」

最後、担当職員は、記者に福祉支援をめぐる現実を話した。
「明らかにあの火事を防ぐために、私たち(=行政)は何ができたのかといったら、火をつけようとする現場に居合わせて、本人の手を掴んで止めたかった」
「どうしても、本当に正解がない。結果はこうだから、何か間違っていたのだが、どこで。どうしていたらっていう答えを出すのは、非常に難しいと思っている。ただ、いろんな部署や人、関係機関との連携をしながら、個別のケースの多種多様な問題にあたっていくしかない」
そのうえで、行政は限界を迎えている、とも漏らした。
「公的なものは、やっぱり高齢者の数が増えてくると行き届かないというか、公助にあまり期待をされても…全部やってくれると思ったら大間違いです、みたいな」(続く)
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