マイヨ・ジョーヌで日本を変える。「大事なのは想像すること」

片山氏が今取り組むのが自転車競技者の育成だ。ツール・ド・フランスに日本チームとして初出場を果たすのが目標なのだが、これには狙いがあるのだという。

片山右京氏:
野球の大谷翔平選手みたいなヒーローが出て、かっこいいメッセージとか送ったらイメージも変わるんでしょうけど。世界で見ると自転車は超ウルトラ弩級のスーパーメジャースポーツで、「ツール・ド・フランス」っていうのは、リアルのお客さんが1600万人。ヨーロッパの三大スポーツがサッカーとF1と自転車ですって言ったら、え?って感じがしますよね。

――広く周知されていくためにはスターが必要だということですね。

片山右京氏:

僕はチームを作って、とにかく日本のチームでツール・ド・フランスで日の丸を揚げる、君が代を流すっていうのをやってるんで。日本人が勝てるわけがないとみんな言うんですよ。だけど、みんな落ち着いてくださいって。野茂(英雄)選手が(アメリカへ)行ったとき、同じこと話したでしょって。大谷翔平選手を見て、今同じことを言う人がいますかって。

日本人はオリンピックでもマラソンだろうが、フェンシングだろうが、卓球だろうが、バドミントンだろうが、レスリングだろうが、柔道だろうが(勝っています)。勝ってないのはF1と自転車だけですよみたいな。

F1は今角田(裕毅)くんがいつ勝ってもおかしくないところに来てるし、自転車も短距離は去年の末には世界選手権で金メダル三つも獲ったり、もうフィジカルの差はない。世界一の花形のツール・ド・フランスってところでは今、アジアではNo.1。世界ランキングも29位とか30位あたりまで来たんで、実力がないわけではなくて、手前味噌ですけど、伸びてるんです。

そんなことはできるわけない、お前に何ができるんだって、F1でも他のスポーツやってるときでも、今も言われ続けてますけど、大事なのは、日本人がマイヨ・ジョーヌっていうリーダージャージ(ツール・ド・フランス個人総合成績1位に与えられる)を着て最終日にシャンゼリゼに入ってくる日が必ず来るんで、それを想像すること。

――時々、気を抜きたくなることはないんですか。

片山右京氏:

僕、いつも気を抜いてるんですよ。ちょっと正しい言い方じゃないけど、自分がもう終わってる人間で、今F1の最前線で今日勝たないと日本一になれないでもないし、ただの年寄りになってきてるんですから、よく見てもらう必要もないし、物理的なところで言うと、両親が他界して介護とか大変なのも終わって、お金ももうかからない。子どもたちも結婚したりして出ていく。失うものはない。

仕事だけをしてればよくて、確かに肉体とかは若いときとは違うかもしれないけども、運動する時間もあるし、多少目が悪くなって、耳が悪くなって、口が悪くなってもみんな大目に見てくれて、そういう意味じゃ今、青春真っ盛りで、運動して筋肉痛になっても果たしてこの筋肉痛はいつの筋肉痛だ?ぐらい。リラックスしてます。

――肩肘張らないというか、ありのままに過ごすということがいいんでしょうか。

片山右京氏:

むしろ若い頃から駄目なことばっかりで、失敗して経験して、迷惑かけて、いつか頑張って立派な大人になりたいと思ったのが、無理だなと。素直に生きようっていう。その代わりバトンタッチをちゃんとできるように、正直ベースでいこうっていうことにした瞬間から見栄を張るのもやめたり。

僕は同じ服装を5枚ずつしか持ってないんですよ。スポンサーたくさんしてもらって、チームとか何億もかけてやってるけど、自分の車も持たない、女性のいるお店に行かない、ギャンブルやらない、タバコ、酒やらないとか。

僕は最低限の生活の、バカみたいなお金の使い方はしないんで、若い人を応援してあげてくださいっていうので運営させてもらってるんで、端で見るよりは真面目ですよ。すごく質素。さっきも楽屋にあるお弁当三つぐらい持って帰れば三、四回食事助かるなと。