アメリカも“忖度社会”に…トランプ政権で加速する「分断」

小川彩佳キャスター:
作品が描くのは、社会的な脆弱さだけが切り取られて伝えられがちな立場の人たちだと思うんですが、そうした人たちを堂々と、観客と地続きの1人の人間として敬意を持って描いているというところに、この作品の強さがあると感じました。

藤森さんは作品をご覧になったんですよね。

藤森祥平キャスター:
監督が話していた通り、ラストはみんながそれぞれを考えさせられるようなシーンでしたし、出演者の優しさや希望も見えましたが、無情さや虚しさも伝わってきました。

何を感じるかは人それぞれだというような作品でした。

小川キャスター:
監督は現代に色々なメッセージを込めたんじゃないかなと思います。

ベイカー監督は、「『社会の片隅にいる人々』を描いてきた」と話していましたが、実は、インディーズ映画の担い手だったんです。

その監督の作品が、大メジャーであるアカデミー賞の作品賞や監督賞を受賞したというのは、今のアメリカ社会、トランプ政権下で揺らぐ多様性の危機とも無関係ではないのではないかと私は思います。

こうした作品に込められた思いや受賞の快挙というのが、本当に苦しい立場にいる人たちの連帯、そして、支えのメッセージとしても響いていくのではないかなと感じました。

藤森キャスター:
先々週にアカデミー賞の受賞がありましたが、一方で、アメリカ社会は分断がさらに進んでる気がします。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
この映画とは少し別の話なんですが、私の友人が最近アメリカに行って文化関係のシンポジウムに出席したそうです。

そしたら、シンポジウムが始まる前に主催者から、「多様性やLGBTなどの話はしないでくれ」という要請があり、出席者たちは「しょうがないな」と受け入れたそうです。

アメリカでさえ、多様性などに対する忖度が進んでいるということに友人は「驚いた」と言っていました。

ですが、一方で非常に激しい反対の動きも出ているので、まさに社会が分断の傾向を強めているということだと思います。

藤森キャスター:
変化が目に見えて分かるということは、今後、ますます広がっていくのではないかという懸念があります。

小川キャスター:
一方で、トランプ大統領に期待する声というのも、依然大きいですからね。

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<プロフィール>
星 浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年