特殊詐欺拠点「KKパーク」の対岸に暮らす住民たちの“日常”と“変化” 世代によって異なる認識も

私たちは早速取材を開始し、地元住民に「KKパーク」について話を聞くことにした。すると世代によってKKパークに対する認識の違いが垣間見えた。

高齢の住民に「対岸のあの建物が何なのか知ってますか」と尋ねてみると、「よく分からない」という言葉が返ってくることが多かった。人身売買が行われているとされ、「一度入ったら帰ってこられない」とも言われている詐欺拠点がすぐ目の前に建っているにもかかわらず、「よく分からない」と言うのは驚きだった。しかし、詐欺に加担させられる可能性が低い高齢者からすると「KKパーク」も日常の風景の一部に過ぎないのかもしれない。

だが、もう少し若い世代に話を聞くと、KKパークへの不満やそこから逃げてくる人たちに関する情報を口にする人も多くいた。「刺されて怪我をしながら対岸から逃げてきた中国人を見たことがある」と話す女性は、「タイ政府が電力を遮断する前はKKパークから大音量の音楽が流れていてうるさくて寝られなかった」と当時の不満を口にした。そして、「ミャンマー側への電力が遮断されるようになってからは、音が静かになって嬉しい」と喜んでいた。

ただ、彼女はKKパーク内部で行われている犯罪行為などについてはあまり知らず、彼女にとってKKパークは、あくまでも自分が生活するうえで“迷惑をかけてくるご近所さん”くらいの位置づけであるように感じられた。

さらに年齢層が低い若者たちは、対岸の詐欺拠点をより強く意識して生活しているようだった。

22歳の男性は、タイ人の友人(当時17歳)がミャンマー側の詐欺拠点で働いたことがあると話した。学校に通わず無職だった友人は去年、騙されてKKパークに連れて行かれ、半年ほど働かされたという。友人は「携帯電話は押収され、十分な食事も与えられなかった。他の人が暴力を振るわれているのを見た。“仕事が上手くできなければ売り飛ばす”と脅迫された」と語っていたそうだ。

友人からそうした話を聞いたこともあってか、男性はKKパークについて「行きたい所ではない」と話した。また、最近は友人とのグループチャットでもミャンマーの詐欺拠点から大勢の外国人が解放されたニュースが共有されているそうで、犯罪集団のターゲットになりやすい若者たちの関心は高かった。