日本人も巻き込まれるミャンマーでの特殊詐欺…垣間見えた「簡単に行けてしまう危うさ」

日本人の高校生2人が詐欺拠点で働かされていたというニュースは世間を驚かせた。例に漏れず、私も衝撃を受けた。愛知県に住む16歳の男子高校生はネット上でやり取りしていた相手から「特技を生かせる仕事がある」などと勧誘されたという。

メーソートを訪れる前、私は「日本から遠く離れた場所から特殊詐欺が行われているのか」と考えていたが、今回の取材を通して感じたのは「いとも簡単に詐欺拠点へと行けてしまう危うさ」だ。タイ当局が警戒を強めているものの、依然として国境となる川は歩いて渡れてしまいそうな場所があったり、検問のない小さな橋が架かっていたりと、正式な手続きを経ずに越境できてしまう状態だった。簡単に渡れる場所だからこそ、犯罪組織にとっては外国人を連れ込みやすいのだろう。

だが、対岸の詐欺拠点を間近に見たり、住民などから「暴力や殺人なども横行している」という話を直接聞いたりして、「絶対に行くべきではない場所」でもあると改めて感じた。闇バイトに応募して軽はずみに渡ってはいけない場所だ。

少数民族武装勢力が“取り締まり”を強化したことで、犯罪集団がカンボジアなど他の国に拠点を移しているとの情報もある。しかし、タイ当局は「犯罪集団がまだ活動を続けている」としている。少数民族武装勢力はもともと犯罪集団と利権でつながっていたと指摘されていて、“取り締まり”も国際社会からの批判をかわすための“その場しのぎ”のパフォーマンスなのかもしれない。

「ミャンマーとの国境の街」メーソートが「詐欺拠点に隣接する街」でなくなる日は来るのだろうか。いまだ複数の日本人がいるとされる詐欺拠点をめぐる動きを、今後も注視していく必要がある。