YouTubeで登録者246万人を誇る、東大発の知識集団「QuizKnock(クイズノック)」。伊沢拓司を筆頭に、メンバーがテレビなど各メディアで活躍するほか、イベントやグッズ制作、企業や官公庁とのコラボレーションも活発です。そんなQuizKnockの立ち上げの裏側には、「崖っぷち」に立たされた運営会社の危機がありました。なぜQuizKnockは生まれたのか? そしてなぜ倒産寸前から、急成長を遂げることができたのか? QuizKnockを運営する株式会社baton(バトン)代表取締役・衣川洋佑さんに聞きました。

<東京ビジネスハブ>
TBSラジオが制作する経済情報Podcast。注目すべきビジネストピックをナビゲーターのPodcastプロデューサーである野村高文と、週替わりのプレゼンターが語り合います。本記事では2025年2月2日の配信「『もう会社をたたもうか・・』 倒産間際のベンチャーから QuizKnock の誕生まで(衣川洋佑)」を抜粋してお届けします。

プレゼンター・衣川洋佑(きぬがわ・ようすけ)
株式会社baton代表取締役。大学卒業後、株式会社ワークスアプリケーションズで新規事業開発を担当し、企業のコンサルティング、教育サービスの開発・提供などに従事。2013年に株式会社batonを設立し、「遊ぶように学ぶ世界」をビジョンに掲げ、QuizKnockを運営。2023年からは佐賀県の東明館学園の理事も務める。

QuizKnockの運営会社「baton」とは?

野村:
衣川さんが経営されている株式会社batonは、YouTubeチャンネル「QuizKnock」を運営されています。QuizKnockの運営元がbatonであることは知られているのでしょうか。

衣川:
プロモーションを大々的に行っているわけではないので、ご存じの方はわずかかもしれません。一方で、Web記事などでbatonの名前を紹介しており、少しずつ認知されているかと思います。

QuizKnockのメンバーからは、「もっとプロモーションした方がいい」と言われることもありますが、私は現場のメンバーの思いを大切にし、彼らに焦点を当てたいと考えています。なので、QuizKnockという名前を前面に出して活動してきました。

野村:
QuizKnockについて詳しくお伺いする前に、batonを創業された2013年当初の事業内容や、起業のきっかけについて教えてください。

衣川:
大学生の頃から起業願望があり、教育をより良くする事業をしたいと考えていました。教育をテーマにするなら、「楽しんで学ぶ」という新しい価値観を作りたいと思っていたんです。

会社員時代はエンジニアからスタートして、その後、新規事業を大きくしていく仕事をしていました。会社員として10年ほどの準備期間を経て、2013年に起業しました。事業は主に、学生向けに問題集をクイズで学べるようなアプリの開発ですね。

野村:
教育に着目した理由はなんだったのですか?

衣川:
恥ずかしながら私は大学時代、あまり勉強せずに卒業しました。なので、大学教育に意味があるのか疑問に感じていたんです。

だけど、会社員時代に中国に行った際、現地の塾や学校、インターンシップの現場を視察する機会があり、彼らが熱心に学んでいる姿を目の当たりにしました。デパートの中に教室があって、200~300人もの生徒が自習しているような光景が広がっていました。

野村:
デパートの中で塾が開かれているのですね。

衣川:
他にも、大学1年生からインターンシップでアプリケーションを開発をしている学生もいましたし、学び続ける土壌ができている。日本はこのままでは勝てないと感じました。日本が学び続ける社会になるためには、新しい価値観が必要だと考え、「遊ぶように学ぶ」というコンセプトを掲げ、楽しみながら学べる世界観を作るために教育事業へ参入しました。