▽アヒルの足ようにバタバタと…

 今回の「教育無償化」をめぐる与党、特に自民党との表舞台での交渉は、大きく3つのレイヤーで進んだ。上層から維新の前原共同代表と自民党・小野寺政調会長ライン(時に森山幹事長)、中間層に維新の青柳政調会長と自民党・小野寺政調会長ライン、下層に維新の金子、斎藤、自民の柴山、松本議員らの実務者協議ラインだ。それぞれのレイヤーで表の協議だけに限らず水面下の交渉も存在し、無償とする授業料の金額や来年度か再来年度かといった時期をめぐり激しいやりとりが繰り返されたとみられる。

 一方、遠藤氏はこの3つのレイヤーとは別で動きは基本的に水面下である。自民党の森山幹事長や小野寺政調会長とコンタクトをとりつつ、実務者の1人である松本洋平衆議院議員をカウンターパートに着々と裏の交渉を進めていた。

 (遠藤敬衆議院議員)「アヒルで言うたらアヒルの足ね、バタバタバタバタとやっているのが僕の仕事」

 自らの動きをこう例える遠藤氏。このインタビューの時点では私学を含めた授業料無償化の上限金額が交渉の焦点となっていた。

 (遠藤敬衆議院議員)「(与党に)金額を提示して交渉していく中で、書きぶりができないんですよ。例えば63万円とか、60万円とか、48万円とかいきなり書けないので、そこは6000億という予算の総額で担保していくというところなんです」

 「100ゼロはないのでね、もう1万円たりとも2万円たりとも下げられへんぞっていうことでは交渉にならない、落としどころはどこになるかっていうのはいろいろです、大阪方式の問題も指摘されていて完璧なものって東京方式でもそうですけど、ないと思うんです、あんまりこっちも振り切ってしまうと、大阪方式が正しくないって言ってる人たちは余計過度に先鋭化してくるので、そこは形勢をうまくしながら、政治家同士がやることですから、まとめていくと丸めていくという作業は僕がしてるということですね」

 その上でアンダーの交渉担当者として自らの役割をこう話す。

 (遠藤敬衆議院議員)「表で代表や共同代表、政調会長はどんどんやってもらったらいいと思うんです。そのガチャガチャとやったやつ、下にこぼれてきたやつは丸くないんです」

 「ガチガチやっている話を僕がいやそういう意味じゃないんだって働きかけたり、いやそれはおたくらがちょっと下がってあげないと、うちの共同代表や政調会長が立っていられなくなるじゃないですかと交渉する」

 「歩み寄るように、ちょこちょこっと補修をかけて、丸めるっていうのは必要なんですよね、前原さんや青柳くんが頑張って、アンダーで何とか僕が食い止めたら教育無償化を実現させられる、結局成案になったら国民に少しでもお役に立てることだと思うので」

 表の交渉を補完しつつ調整を図っていくのだが、あくまで「教育無償化」という党の政策目標を実現するためだという。そして交渉相手の出方とタイミングを見極めつつ対応する。

 (遠藤敬衆議院議員)「いろんな回しがあって、ここは立憲ときちっと話しましょう。この案件は国民民主と話しましょうと森山幹事長とか自民党の百戦錬磨の人たちはそこまで計算した中で動いてますね、今は国民民主よりもちょっとうちを先行させて、その結果で国民とどういう形ができるのかなど、いろんな想定問答集を抱えてお互いに交渉に入っているというのはわかりながらやってます」