矢継ぎ早のトランプ関税 自動車関税25%の影響は

矢継ぎ早に出している関税政策をまとめた。2月の初めにトランプ大統領が、カナダ・メキシコ・中国に関税を課す大統領令に署名をした。先週は鉄鋼とアルミニウムに25%の関税、さらに貿易相手国に対して同じ水準の関税を課すという相互関税の検討も指示をした。今週はアメリカに輸入される自動車に対する25%程度の関税措置を打ち出した。
――政権内でも整理はできていないのではないか。
早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
できてないと思う。アメリカは今はっきりと分裂している。トランプ支持層であり共和党の支持層はどちらかというとアメリカの中西部などで中国とかアジアからの輸入品で我々の雇用が奪われてきたという人たち。そちら側にはこういう政策は受けがいい。民主党支持者のことはもう気にしていない。普通に見ると過激な過激な政策が出てくる。

4月1日に国別の報告書が出る。ここで整理してくるのではないかとされる中で、一番気になるのが、自動車。現在アメリカは日本から輸入する乗用車には2.5%、トラックには25%の関税を課している。一方で日本側の関税率は0%。乗用車の2.5%を25%にすると言っているので、発動されると日本への影響は大きい。

対米輸出額を見てみると、自動車は部品も含めると34%を占めており、まさに基幹産業だ。自動車関連だけで対米輸出の3分の1を占めている。メキシコやカナダ経由でアメリカに入っているものもある。
――自動車25%関税をやられると、日本はやはり、つらい。
早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
4月1日の国別レポート次第。このレポートでアメリカがさらに強気なレポートを出してくる可能性はある。作成するのは商務省で、ハワード・ラトニックという商務長官は非常に関税主義者。80年代の日米構造協議の時も、日本はアメリカからの自動車の関税率は低く0%だが、それ以外の例えば流通システムなどいろんなところが非常に複雑。アメリカの自動車が売れない仕組みになっているという非関税障壁にいろいろ難癖をつけてきたという時代があった。おそらく関税は低いが、それ以外の商慣行で実質的に関税が高いことと同じではないかと。なので我々も関税を上げるんだというロジックが出てくる可能性は十二分にある。

日本の自動車メーカーのアメリカへの輸出台数を見てみると、トヨタ自動車は53万台超。マツダは28万台、スバルは30万台、三菱自動車が10万台などとなっている。
――マツダやスバルは、現地生産よりも直接輸出車が多く、今回の関税政策のダメージをもろに受ける。
早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
アメリカに10年住んでいたが、スバルやマツダは民主党支持者に人気がある。リベラル層に人気があり、逆にいえば、共和党支持の保守層は、GMやピックアップトラックに乗っている。民主党のことを考えなくていいとすると、こういったところに関税を課してダメージがあっても気にしないという可能性はある。
アメリカの消費者、国民の中の分断がいかにすごいかということが支持率にも表れている。トランプ大統領の支持率を見ると、1月の就任後に行われた調査より2ポイント下がって45%。「支持しない」と答えた人は3ポイント上がって51%だった。仕事ぶりの評価で見ると共和党支持者は93%が評価していて、民主党支持者は4%しか支持していない。
――トランプ政権に日本や他国はどう立ち向かえば良いのか。「適用除外」をお願いできるのか。

本来なら、日本も強気で「報復関税を出すぞ」ぐらいの姿勢で臨むのもあり得る。ただ今の石破政権は非常に政権基盤が脆弱。そうすると例えば自動車の業界団体などから「強気の報復関税はやめてください」みたいになると聞かざるを得ない状態。政権基盤が弱いことが今、裏目に出ているのかもしれない。
(BS-TBS『Bizスクエア』 2月22日放送より)