トランプ大統領就任1か月 株式市場の受け止めは?

大統領就任から1か月。トランプ氏は公約を猛スピードで実現している。

トランプ大統領:
「国家エネルギーの非常事事態を宣言する。掘って掘って掘りまくれ」
「『関税は辞書の中で最も美しい言葉だ』といつも言っている」
「我々はプラスチックストローに戻るんだ。それはいいことだ」

不法移民の排除や政府職員の削減など就任してから署名した大統領令は少なくとも70本を超えた。こうした政策に、市場はどう反応しているのか。SMBC信託銀行の山口真弘氏は…

SMBC信託銀行 チーフマーケットアナリスト 山口真弘氏:
関税がここまで早く持ち出されるとは、正直思っていなかった。ゆっくりやっていくだろうと思っていたのが、意外と早く現実のものになりそうなので、投資家心理が悪化しやすい地合いになってしまっていることが、ある意味サプライズ。トランプ大統領の発表の仕方もセンセーショナルで、結構インパクトを持って、アメリカ株市場も反応していたが、だんだんそれに慣れてきたことと、実際どうなるかはまだわからないので、それを織り込むには少し早いということだ。

日本株への影響については…

SMBC信託銀行 チーフマーケットアナリスト 山口真弘氏:
どちらかというとリスクは下方向にあるのではと思っていて、関税政策によって景気が悪くなるという部分が警戒されやすくなる。日経平均株価は3万5000円ぐらいまでは引き続き、ダウンサイド(下振れ)はあるだろうと思う。ただ減税策などへの期待が逆に高まってくると思うので、関税策が先に出て、株が下押しされて、仮に3万5000円までいったとしても、減税策が出てきたら、それがきっかけに戻しを試す展開はあり得る。

トランプ大統領就任1か月 矢継ぎ早の関税政策の狙いは

ワシントン支局の涌井記者に話を聞いた。

――関税のターゲットに自動車・半導体・医薬品も加わった。これはなぜか。

ワシントン支局 涌井文晶記者:
トランプ大統領の自動車・半導体・医薬品の関税については、国内に工場を呼び込んで雇用を生み出すという目的で関税を課すんだという説明に重点を置いている。産業界に対しては繰り返し、アメリカで製造すれば関税はかからないとアピールしており、自動車工場などをアメリカに呼び込みたい考えだ。また、医薬品は中国、半導体は台湾からの輸入に依存しているため、中国に対する経済安全保障強化という観点からも国内に生産を戻したいという意向がうかがえる。ただ、この関税がこれまでの相互関税とどう関係するのかあるいは全く別の枠組みなのかといった詳細は現時点ではわかっていない。

トランプ大統領就任1か月 アメリカ国内での受け止めは?

――矢継ぎ早に打ち出されている幅広い関税の上乗せは米国経済に大きな影響を与えるが、国内の反応は?

ワシントン支局 涌井文晶記者:
エコノミストたちからは、国内の物価上昇に繋がるという警告が続けられている。また、世論調査でも、メキシコやカナダに関税を課せば物価上昇に繋がるとして反対の声が強くなっている。ただトランプ大統領自身は「物価上昇があったとしても、あくまで一時的な痛みだ」などと説明しており、今後も関税を自身の政策ツールとして使い続ける姿勢は崩していない。

トランプ大統領就任1か月 特徴的なことは?今後は?

――トランプ大統領のスタートダッシュの特徴と今後のポイントは?

ワシントン支局 涌井文晶記者:
最初の1か月間は、大統領選勝利に導いた岩盤支持層に報いるということに力を入れていた。不法移民の対策や多様性に配慮していた政府の方針の見直しなど、保守的な選挙公約をどんどん実行に移している。また政策を矢継ぎ早に打ち出すことで自身への反対派、あるいはメディアがじっくり検証や反論ができないという狙いがあるとも言われている。実際、民主党はこの間、存在感を失ってしまっている。ただこうした政権発足後の動きは、無党派層など幅広い国民へのアピールには繋がっていない。世論調査での支持率は政権発足直後からわずかながら低下している。2年後には中間選挙が控えるという状況。徐々にもう少しウイングを広げるために「チップや残業代は免税」といった幅広い層に恩恵が及ぶような政策に徐々にシフトしていくものとみられる。