なぜ日本的価値が世界に求められたのか
野村:例えばテクノロジーの発展が早すぎて疲れてしまうことや、メンタルを崩すような方々が多くいらっしゃること、健康を意識する方が増えたこと。コロナ禍の影響で、稼ぐだけがなんか人生ではない、という価値観の変化もあると思います。そこに日本の元々あった価値をうまく繋いだものが世界に受け入れられやすいということでしょうか。
佐宗:そうだと思います。まさに今話していることはアンチテーゼのようなことです。典型的なことは気候変動と資本主義です。
気候変動は特に欧州の方で進んでいますが、自然を克服するものとしてきたキリスト教の価値観から、むしろ自然ともっと共生する方が良いと思われるようになってきています。
資本主義の一例はアメリカの状況です。とにかく稼げば良いということで分断がよりひどく大きくなり競争が激化し、勝ち負けも激しくなっていました。このような世界は本当にいいのかという価値観に対して日本的な世界観が求められています。
「第3のジャポニズム」はアジア圏でも人気ですが、それ以上に欧米圏でより注目されています。今までの欧米のやり方に対する疑問として、まだ価値観も近い日本を参考にしながら、欧米とは違うやり方で日々の生活の豊かさを感じているっていうこと自体が一つの価値になってきていると思いますね。
野村:資本主義自体は悪いことではないですが、稼ぐだけということに疑問を持っている方々が日本的な価値観に対してシンパシーを感じているということでしょうか。
佐宗:そう思います。成熟した国になり、ある程度モノは持つようになりました。もちろん収入の多寡はありますが全くモノがなくて過ごしている人は今の時代いません。その中で豊かに生きるってどういうことかと考えるときのヒントが実は日本にあると思います。
例えば、欧米のジャーナリストの方が書いた “IKIGAI”という本が海外でとても売れています。その本には、沖縄で長寿の方が多い村にこれからの時代の豊かな生き方のヒントが隠されているのではないか、ということが書かれており、ベストセラーとなっています。そのような流れの中で、日本というものを今の欧米の人にとって新しい可能性として見ていると言えますね。