「自分の人生を変えるもの」にお金を払う経済
野村:どのような日本の文化価値が世界でマッチすると思いますか?
佐宗:経験経済から変化経済という言葉があって、人が体験に対して価値を払うだけでなく、自分自身の人生を変えていくってことに対してお金を払うっていう考え方があります。
例えば、毎日瞑想するという習慣を持つことで自分が豊かになる。これは一種の変革です。日本の文化はこのような体験をまず提供するという前提がありながらその先にもあります。
他にも、日本食を食べることで健康になり、ダイエットも期待できると考えるアメリカ人がいるように、ライフスタイルそのものを変えるきっかけを提供できれば、大きな価値を生み出すことができます。
今、カルチャープレナーとしてチャレンジしている人はそのようなことに挑戦することで、自分たちの文化の価値を経済的にも高めようとしている流れがあると考えます。
今の30代中盤から後半ぐらいの方は、ソーシャルアントレプレナー、いわゆる社会起業家が流行った時代に入ると思います。今の20代にとってはこれが文化起業家だと思います。社会的な課題を認識しつつも、課題解決に留まらず、自分たちの強みを活かしてライフスタイルを提案しようとする世代が多くいるように感じます。
野村:他にもカルチャープレナーにはどんな可能性がありますか?
佐宗:もうひとつの固まりとしてあるのが、スタートアップ(起業家)といっても、必ずしもゼロイチでやっている人だけではなくて、老舗企業の後継者の方も少なくないように思います。特に30代ぐらいで、一度海外に行ったことがある。そして後継をされているような方は、伝統的な家業の文化を、現代の海外のビジネスモデルに合わせて再構築している人もいるようです。大体この二つのセグメントがすごく特徴的でこれから大きくなっていくでしょう。
アメリカスタンダードのグローバリゼーションのようなものが大体2010年代中盤ぐらいで終わりました。これは第一次トランプ政権がきっかけだと思います。そこから各ローカルの地域がそれぞれの地域にあるものを見直すフェーズに入ってきています。そのような世代に社会へ出てきた人が、ローカルの価値観へ回帰する流れの中で新しいテーマを見つけて、社会課題を解決するテーマと繋がる文化として彼らの中に出てきていることだと僕は解釈しています。
<聞き手・野村高文>
音声プロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。