2000年代頃から、ビジネスを通して社会課題の解決に取り組む「社会起業家」と呼ばれる起業家が増加しました。「社会的企業」と呼ばれる企業は国内だけでも2014年時点で20万社を超え、経済全体にも影響を与える存在になっています。
こうしたなか、新しいビジネスの担い手として、日本の文化資産にビジネスを通して価値を見出す「文化起業家(カルチャープレナー)」が注目されています。なぜ今「文化」なのか?カルチャープレナーの注目すべきポイントは?戦略デザイナーで、戦略デザインファームBIOTOPE CEO・佐宗邦威(さそう・くにたけ)さんにうかがいました。
<東京ビジネスハブ>
TBSラジオが制作する経済情報Podcast。注目すべきビジネストピックをナビゲーターのPodcastプロデューサーである野村高文と、週替わりのプレゼンターが語り合います。本記事では2025年1月12日の配信「佐宗さんが提唱する『カルチャープレナー』とはいったい何か?(佐宗邦威)」を抜粋してお届けします。
「カルチャープレナー」とは何か
野村:まず最初に佐宗さんの事業内容についてお伺いできますでしょうか?
佐宗:戦略デザインファームBIOTOPEの代表をしています。主な事業内容は、企業のビジョン策定、それに基づく新規事業の創出、ブランディング戦略の展開などです。最近は企業の思想や理念自体が、企業のブランドになっている時代でもあるので、理念から事業ブランディングまで一貫して支援している会社です。
野村:佐宗さんが「カルチャープレナー」の存在に着目して、2年ほど前から提唱されてきたということですが、これが何なのか改めて伺ってもよろしいでしょうか?
佐宗:「カルチャープレナー」とは、カルチュラルアントレプレナーをもとにした造語で、「文化起業家」という意味です。注目したのは、京都市のイノベーションスタジオというイベントで、京都への新たなビジネス誘致策を有識者会議で議論したのがきっかけです。例えば、ディープテック企業の誘致方法について議論しました。
京都という場所は、外国人がたくさん来る場所でもあり、さらに文化が非常に残っているような地域でもあります。このような場所を、文化というものの価値を再解釈して、現代風に発信していけるような起業家の聖地にしたらいいという提案をしました。それが「カルチャープレナー」という言葉が生まれた始まりです。
いろいろな日本文化のテーマはありますが、文化を武器に起業をして、事業にしている人はたくさんいるということに気がつきました。それから2023年にForbes JAPANさんと一緒に「カルチャープレナー30」という特集をして、さまざまな文化を日本の文化の価値を再解釈して世界に発信する人、それをカルチャープレナーと呼ぼうと世の中に呼びかけ始めたっていうのが経緯になります。
野村:カルチャープレナーには例えばどういう方がいらっしゃいますか?
佐宗:第1回のForbes JAPANのカルチャープレナー30の表紙になったのは、日本茶を世界に輸出したいと言っているTeaRoomの岩本涼さんや、青海苔や海草を養殖して、それを日本食の新しい形にして発信していくシーベジタブルの蜂谷潤さん。2024年版ですと、大工アーティストを名乗って日本の職人の技を世界に発信している菱田昌平さんなど。他にも酒であったり、ファッションであったり。幅広いテーマの方がいらっしゃいます。