“前原共同代表からご指名”前国対委員長が動き始める

そんな中で、交渉担当者にある人物が加わった。維新の前国対委員長で森山幹事長ら自民党幹部に太いパイプをもち水面下での交渉に定評がある遠藤敬衆議院議員だ。
1月末、前原共同代表から直接、遠藤敬衆院議員に「交渉がスタックしていてきつい、アンダーで自民党との交渉に動いてもらいたい」と依頼があったという。現在、役職にはついていない遠藤氏に協力をあおぐほど交渉が行き詰まっていたわけだが、維新の新執行部はいわゆる裏の交渉に否定的なスタンスをとってきた。去年12月から日本維新の会は新体制となり新たに代表となった吉村洋文氏は前執行部の国会運営を“飲み食い政治”と痛烈に批判し、永田町文化を廃し国対政治から脱却すると訴えた。新たな国対委員長には酒の飲めない漆間譲司衆議院議員を起用したくらいだった。しかし、高校授業料の無償化という看板政策の実現のためには党の方針やしこりはいったんおいてでも維新のMr.アンダーの力を請うたのだった。
遠藤前国対委員長が水面下で動き始めてから1週間。前原共同代表と自民・小野寺政調会長の会談が実現した。予算編成のタイムリミットが迫る中で、その後再来年度から私立高校に通う生徒を持つ世帯への支援について、39万6000円という1つの基準が示されるなど、交渉が前に進み始めた。
再び辣腕をふるい始めた遠藤敬前国対委員長は我々の取材に「いきなりファーストコンタクトでネゴシエーションをするなんていうのはきついですよ。お酒はなくていいし、ランチでもいい、その人を知っていて信頼関係があったらいい話」と話す。
私立高校世帯への支援をめぐって、与党側はその後ベースとなる金額を45万7000円に引きあげ、維新に歩み寄る姿勢を見せている。2月21日、政調会長間の協議も終結。月内に党首会談を経て正式合意に至る見込みだが、その陰にはしたたかに交渉を進めるバイプレイヤーの姿があった。
MBS報道情報局 東京報道部 尾藤貴裕
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