高校授業料無料化 課題は?「公立は厳しい」の声
藤森祥平キャスター:
高校授業料無償化については与党と維新で一致点を見いだしました。ただ、これに合わせて維新側が総額4兆円の社会保険料の負担軽減を盛り込んできたということで、21日も協議を続けるそうです。
高校授業料無償化の案については以下の通りです。

2025年4月~ 所得制限を撤廃
2026年4月~ 私立高校 45万7000円をベースに
教育経済学者 中室牧子さん:
2023年に出産育児一時金が、43万円から50万円に値上げされたことがありました。そのときに産院が8万円分値上げして、結局、家計の負担が減らなかったことがありました。同じことが起きないか、ちょっと心配になります。
藤森キャスター:
今年度から、段階的に授業料の完全無償化に取り組んでいる大阪の公立高校の校長先生に取材しました。

大阪府立佐野工科高校 松野良彦校長
「先に私学の選抜があるので、そこで(進学先を)決めてしまう。公立に来ていた層が、私学に行ってしまう。公立はかなり苦しい状況になってきている」
藤森キャスター:
ということで、生徒が集まらない、という声でした。

中室さん:
経済学のトップジャーナルで掲載された、韓国のデータを使った面白い論文があります。なぜ韓国人が教育熱心なのかを明らかにした論文で、一言で言うと「隣の子が私立に行くとうちの子も」「隣の子が塾に行くとうちの子も」というようなことです。
今回の教育無償化は、比較的、世帯所得の高い人たちが対象になっています。その人たちが浮いたお金を塾に回したり、習い事に回したりすると余計に教育熱が過熱して、受験競争が厳しくなって、本当は家計の教育負担を減らしたいからこの政策をしているけど、蓋を開けてみると負担が減らなかったということになるんじゃないかと懸念しています。
誰もが、本来、無償で通える公教育にしっかりと投資をすることが王道なのではないかと思います。
小川彩佳キャスター:
本当に子どもたちのためになるのかということですね。
具体的にどのような公教育の支援が行われるべきだと思いますか?
中室さん:
最近、経済学の研究でよく言われるのは、習熟度に合った学習は非常に効果が高いと言われています。そういうことを実現しようと思うと、例えばコンピュータを使った学習は習熟度に合った学習を実現しやすいです。
今、小中学校では1人1台、パソコンが公費で配られていますが、高校はまだです。
これからAI、プログラミング、データサイエンスなどが非常に重要だと言われている世の中では、高校でもっとICT教育をきちんとして、そういうところに投資をすることはあり得ると私は思うんですけれど、それよりは無償化という話が議論の俎上に上っている状況だということですね。
藤森キャスター:
実際に教育格差が埋まっていく時間がどれぐらいかかるかわかりませんが、これから子どもをもうけようという人が、私立も選択肢に入るとなると、産んでみようかなと思うかもしれないですよね。
中室さん:
ただ、先ほどの韓国のデータでは「ステータス外部性」といって「隣の子どもの教育に影響を受ける」という状況があることが、韓国の少子化を著しく進ませているという結果になっています。














