九州電力・川内原発で、国の原子力防災訓練が今月14日から3日間行われました。12年ぶりとなった国の訓練の課題を検証します。

国の原子力総合防災訓練は国、県と、薩摩川内市など川内原発30キロ圏内の9市町が実施しました。国の訓練は鹿児島では2013年以来12年ぶり、川内原発では1号機の運転延長後初で、294機関・4800人余りが参加しました。

訓練は薩摩半島西方沖が震源のM7.2、最大震度7の地震が発生し、川内原発1号機で重大事故が起きる想定です。

1号機で放射性物質が漏れ出し、原子炉が冷却できなくなるなど、刻々と悪化する事態が再現されます。

今回の国の訓練は、能登半島地震後初でもあり、孤立地区や倒壊家屋から住民を救出する訓練なども行われる中…

(石破総理)「原子力災害対策特別措置法第15条2項につき、原子力緊急事態宣言を発出します」

国の原子力緊急事態宣言を受け、5キロ圏内の住民がボートで避難する訓練もありました。

また住民が、計画されている鹿児島市の避難場所に向かうことが出来ず、姶良市に避難するとの新たな想定も盛り込まれ、放射線量を測定し除染する手順などを確認しました。

能登半島地震を念頭に、住民からは不安の声が聞かれました。

(訓練に参加した薩摩川内市民)
「実際、災害を受けた場合にどういう処置ができるか不安」

「どこかに集まって一緒に避難というのはありうるのかな。もう我先に逃げるのが先決かなと思った」

「市・県の職員みなさん家族もある。そういうところも難しい。机上の空論にならないように。実際可能かというところから計画を立てていったほうがいいのかな」

“机上の空論にならないように”

過去の阪神・淡路大震災や東日本大震災でも突きつけられた大きな現実のひとつが、どの程度行政が初動対応できるのかという問題です。

去年の能登半島地震でも石川県輪島市で地震発生当日、職員280人のうち40人、珠洲市に至っては本庁170人のうちわずか20人しか集まれず、原発がある志賀町でも6割にとどまりました。

今回、薩摩川内市は初めてこの課題に取り組みました。

「地震の影響や県外出張などにより、8人の本部要員が参集できていない。東部対策部長は現在現場からこの本部に向かっており、代わりに広報対策部で報告させていただく」

想定のねらいは…
(薩摩川内市市民安全部・上戸理志部長)「100パーセントの職員のマンパワーが必ずしも適用できないケースも十分考えられる。そういったものを想定しながら、やはり能登半島地震を教訓に対策を取らないといけない」

そもそも軟弱地盤の薩摩川内市中心部が激しい揺れに見舞われた場合、対応の拠点である県のオフサイトセンター自体、川を埋め立てた場所に立地していることから液状化し、近寄れなくなるおそれも捨てきれません。塩田知事は…

Q.(原発がある石川県)志賀町ですらも6割しか職員参集ができなかった。どういうふうにしていくか?

(塩田知事)「いろいろな災害のときに緊急参集要員を決めて対応するようにはしているが、言われたような事態になっても必要な要因が確保できるかどうかも、しっかり点検しながら検討していきたい」

今回住民の避難でも大きな課題が浮き彫りになりました。避難するため海上自衛隊のボートに向かう際、66歳から76歳の住民12人が海に面したわずか50センチ幅のコンクリートのふちを渡らざるをえず、国の関係者や自衛隊もそれを止めませんでした。

(参加した住民)
「怖い。あそこは」
「だから言った。狭いところを通っていけば危険ではないのと」

「あれも想定外。こういうことがないように反省しなければいけない」

薩摩川内市の田中良二市長は、今回出た課題を次に生かすと強調します。

(薩摩川内市・田中良二市長)「船舶による住民の避難。市の対策本部会議などでまた振り返り、検証したい」

福島第一原発事故から14年。緊張感が薄れているとの声も聞かれる中、訓練の実効性をいかに高めるか、国・県・市の原子力防災への向き合い方が改めて問われています。