オランダとポーランドで開催されている世界バレーで、12年ぶりのメダル獲得を目指すバレーボール女子日本代表。日本のキーマンとなるのは、1次ラウンドで右足首を負傷した主将の古賀紗理那(26)に代わってスタメン出場し、活躍をみせている石川真佑(22)だ。

負傷の古賀に代わってスタメン出場、計73得点の大活躍

9月28日の中国戦で主将の古賀がプレー中に右足首を負傷し退場。絶対的エースを欠いた日本だが、チーム一丸となって、古賀の穴を埋めている。その筆頭が古賀に代わってスタメンに名を連ねた石川だ。今大会はリリーフサーバーとしての出場機会が多かったが、古賀の負傷欠場後は全試合、スタートからコートに立っている。

30日のブラジル戦では18得点。世界バレーにおけるブラジル戦40年ぶりの勝利に貢献した。試合後には「(古賀が)『しっかり自分のプレーだけを頑張ればいいよ』っていう風に声をかけて下さって、本当にとにかく自分のプレーを思いっきりやろうって思ってやりました」と話し、早速起用に応えてみせた。

「試合前には髪の毛を縛り直して気持ちを入れる」と言うように、ルーティンを大事にする石川。これまでは髪をまとめ、お団子ヘアで試合に臨んでいたが、ブラジル戦の試合前に、眞鍋政義監督(59)から“イメチェン”を提案された。「眞鍋さんにイメチェンしろみたいなことを言われて、三つ編みで試合するのは初めてだったんですけど、これが良かったのか?効果が出てるのかなって思ってます…(笑)」。自らのルーティンを変えてまで、強い思いで挑んだ4試合で、7本のサービスエースを含む計73得点。ブラジル戦以降チーム最多の得点を叩きだし、存在感を放っている。

「負けたくない存在」兄は男子日本代表の主将・石川祐希

代表初選出は2019年4月。同年7月のU20世界選手権に出場した際は、キャプテンとして日本を史上初の優勝へ導き、MVPに輝いた。
身長174cmと小柄ながらパワーがあり、ブロックアウトやブロックの間を抜いて打つ巧みさを併せ持つ。何よりサーブが武器で、スピードのある無回転に近いボールで相手ディフェンスを崩し、流れを変えてきた。

兄は男子日本代表の主将、石川祐希。兄は妹について「妹だから頑張ってほしいと思いますけど、彼女のやりたいようにしてくれるのが一番だと思います。女子もバレー界の仲間として、とにかくベストを尽くして欲しいなっていうふうに思っています」とエールを送る。一方、石川にとって兄・祐希は「スパイクの打ち方など見習うところはありますけど、負けたくない存在」だという。

愛知県岡崎市出身の石川は、バレーボールをやっていた姉と兄・祐希の影響で、小学校3年の時に地元クラブチームへ入団し競技生活をスタートさせた。その後、長野県の強豪校・裾花中学校へ進学。全日本中学校選手権に3年連続で出場し、1年時と3年時に優勝を果たしている。

高校は日本代表選手を多く輩出している名門・下北沢成徳高校(東京)に進み、1年からレギュラーとして活躍した。当時3年生だった東京五輪代表の黒後愛(24、東レアローズ)らとともにインターハイと春高バレーを制し、3年時は、キャプテン・エースとしてチームを牽引。インターハイと国体の2冠を達成した。

兄妹そろって代表に選出された東京五輪では、初の五輪出場ながら5試合すべてにスタメン出場し、チーム最多の69得点をマーク。それでも、チームは25年ぶりに予選リーグ敗退となった。石川は当時をこう振り返る。

「『こっちに打ってブロックつかまったらどうしよう』とか、そういう迷いもあってプレーしていた部分があったのかなって思ったので、それが結局プレーに出てしまって、決めきれなかったのかなって思うので。そこは自分自身反省というか、課題っていうのもあがっています」

“練習の虫”、“チーム1の努力家”

東京五輪の悔しさは石川を一層、駆り立てた。“練習の虫”としてチームメイトからも一目を置かれ、合宿では1時間半~2時間前に体育館入り。夜間練習や自主練習への参加も当たり前だ。今大会前にはスパイクの攻撃の幅を増やそうと練習に打ち込むなど、“チーム1の努力家”だ。

「チームとして(世界バレーで)はやっぱりベスト8に最低条件でしっかり入るっていうところはあるので、そこに向けて自分自身もほんとにチームに貢献できるように戦っていきたいですし、しっかり勝ち抜いてメダル獲得に向けて頑張ってチーム全員で勝ちに行きたいなというふうに思います」

苦しい場面でもしっかり決め切り、エース不在のなか役割を果たしてきた石川。チームの目標のベスト8、そしてその先のメダル獲得へ、石川の活躍がカギを握る。

■石川真佑(22・東レアローズ )174cm/64kg、最高到達点スパイク:300cmブロック:285cm
愛知県岡崎市出身、下北沢成徳高校(東京)卒業。
代表歴:2019年ワールドカップ、2021年オリンピック