アフリカ中部・コンゴ民主共和国では反政府武装勢力による戦闘が激化しています。そうしたなか、人々は「死のボート」とも呼ばれ、沈没が相次ぐ巨大な船での移動を余儀なくされています。一体なぜなのか、現地で取材しました。
記者
「タイヤが半分ぐらいまで浸かってしまっています」
コンゴ民主共和国の首都キンシャサ。反政府武装勢力と政府軍との戦闘が30年近く続いていて、首都ですらインフラ整備が行き届かず、道路もこの状態です。
「(Q.大丈夫ですか)キンシャサではいつもこんな状態だよ」
コンゴの戦闘は今年に入りさらに激化し、国連によりますと、先月末以降、3000人近くが死亡、先月だけで40万人が避難民となりました。
「世界で最も貧しい国」のひとつと言われるコンゴ。舗装された道路は国土のわずか2%。
そのため、人々にとって欠かせない交通手段となっているのが、「コンゴ川」を渡る巨大な船です。全長200メートル、巨大な鉄板を4枚つなげ、最後尾のボートのエンジンだけで押し出す仕組みです。取材した船には、およそ300人が乗っていました。
「ここ(首都キンシャサ)には、トウモロコシを売りに来ました」
「地元に戻ります。ここ(キンシャサ)はすごく大変だから」
ボートはキンシャサから1700キロ離れた終着点を目指します。運航はおよそ1か月に渡るため、乗客らは様々な形でボートの上に生活の場を作っています。ところが…
記者
「バージとバージをつなぐ接合部が外れてしまったということで、トラブルが起きているようです。見に行きたいと思います。気をつけないと、本当にギリギリです」
ボートでの運航は危険と隣り合わせです。整備不良や過積載などに伴うボートの沈没事故が後を絶たず、コンゴでは毎年、数百人規模の死者が出ることから、「死のボート」との異名がついています。それでも、貧しい人々にとって他の手段はありません。
「首都キンシャサに来るには、ボートか、飛行機しか移動の選択肢はない。(Q.でも、飛行機は高いですよね)高すぎます」
コンゴは、スマートフォンやEV=電気自動車のバッテリーを作るのに欠かせない「コバルト」の産出量世界一を誇る“資源大国”です。しかし、市民はその恩恵を受けることができていません。
背景にあるのは、鉱物資源の支配をめぐる紛争などです。情勢に詳しい専門家はコンゴ国内だけの問題ではないと指摘します。
東京外語大学 現代アフリカ地域研究センター 武内進一センター長
「外国企業が(資源輸出に)深く絡んでいるが、コンゴの富をかなりの部分、不当に国外に持ち出しているということは事実。これは(コンゴ)国内だけの問題ではなくて、国際的な問題と表裏一体だということを強調したい」
私たちが使う「資源」をめぐり、コンゴで続いてきた争いと搾取の構図。紛争が深刻化する今、国際社会からの支援が求められています。
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