合格しただけじゃ、大学に行けない

“ハードル”は次々とやってくる

高校3年生になると、予備校に通うクラスメイトが増えた。

「予備校はわかりやすいんだろうな。でもすごくお金がかかる」

お母さんは何度も「予備校に行く?」と聞いてくれた。
でも、「自分でもできることあるから。行かなくてもできるよ」と答えた。

お母さんを安心させたかった。

成長するにつれ、シングルマザーとして自分を育てるお母さんへの感謝は大きくなっていった。
朝早くに出勤し、疲れて帰ってくる。働きすぎて何日か寝込むこともあり、これ以上苦労させたくなかった。

貸与型ではなく給付型奨学金を目指す

えりさんはなるべくお金がかからないよう、学校にある過去問を探して勉強した。
先生から授業で使ったプリントを何枚ももらって解き直した。
使わなくなった参考書を友達に借りた。

経済的に浪人はできない。かといって、ただ合格するだけではだめだ。
高校の成績も上げて、返済しなくていい『給付型奨学金』を得て、そのうえで志望校に合格しなくてはならない。

えりさんはこれまでにない、大きなプレッシャーに追い詰められることになった。

受験料は安くない。受けた大学は友達の半分程度

受験シーズンが始まった。終盤になっても、合格はゼロ。

「卒業したら高校のサポートもなくなる。これ以上学力は上げられない」
「やりたいことがいっぱいあるのに、大学生になれないんだ」
「使ったお金も水の泡」

お母さんと2人で泣いた。

卒業式当日もまだ大学は決まっていなかった。
不安のまま卒業式を終えた時、第4志望の大学に繰り上げ合格したと連絡が来た。

えりさんは今も、助けてくれた大人たちに、感謝の気持ちを忘れていない。

「NPOの勉強会では夕飯も食べさせてくれたし、本当に助かった。本当にありがとうございました!って感じです」

「支え、認めてくれる人がいるから頑張れる」

子どもが成長する環境は千差万別だ。くじけそうになった時、支えになる存在が必ずいるとは限らない。

でもえりさんの周りには勉強だけでなく、未来の可能性を広げるための『フィールドスタディ』に協力してくれる大人たちがいた。