児童福祉の専門家じゃなくても
「支援団体がイベントをやるみたい。成田空港で飛行機を見られるから行こうよ」とお母さんが誘ってきた。
イベントは、出かける機会が少ないひとり親家庭のために貨物航空会社のルフトハンザカーゴが開いたものだった。
「この日のために一生懸命準備してまいりました。きょう1日が良い思い出になれば、私たちも大変うれしいです」
イベントは困窮家庭の支援団体と協力して開いたものだが、発案はルフトハンザカーゴの社員だった。
「児童福祉は専門外でも、自分たちができることをしたい」
一緒にやりたいという同僚はすぐに集まり、仕事の合間や業務外の時間に準備を進めた。空港側も全面的に協力してくれた。
「普通の第三者」ができること
職員たちは子どもたちを貨物エリアに案内した。
大人にはふだんの仕事場でも、子どもたちにとっては特別な場所になる。
職員たちが企画したのは貨物用コンテナへの“お絵かき”。
「子どもは本来いたずら好き。ご法度なことを大胆にやってもらう特別感を演出したい」と考えたからだ。
コンテナを選んだのは「君たちも様々な“世界”にはばたくんだよ」という思いがあったから。「子どもたちは自分の可能性を疑わないで欲しい」と願った。

子どもたちに交じって職員もコンテナに絵を描いた。
ドラえもんの『スネ夫』や野球のバットとグローブを描いて子どもたちと笑いあった。
一緒に手押し相撲をしてはしゃぐ職員もいた。
駐機場の果てに夕日が沈みかけた時、爆音が近づき貨物専用機が現れた。
機体に書かれていたのは「こんにちは日本」。
ふだんは機体を指定できないが、ドイツの本社が協力してこの“プレゼント”が実現した。
大人たちそれぞれが自分の立場でできることをした。
子どもたちは貨物専用機の中に案内された。客席が並ぶスペースにイスはひとつもない。貨物を置くための銀色の空間が広がっていた。
子どもたちは貨物機の操縦席に座った。
無数の計器類に操縦かん。コックピットに入れる時間はわずかだったが、大きく口を開けてこの日一番の笑顔を見せた。
「う~わ~、す~ご~!キャプテンの席だ。ここカチカチやるんだ…」
「パイロットの人がかっこよかった。いろんな仕事があるんだなーって思った」
「なんかすごく、未来の技術だなって感じました!」
「来る前は楽しいのかな?ってちょっと不安な感じだったけど、めっちゃ楽しくなってきて…時間忘れるほど楽しかったです!」
えりさんとお母さんも操縦席に案内された。
操縦席に座ったのはえりさんではなく、実は飛行機好きのお母さんだった。
お母さん 「じゃあ、あたしがキャプテン席~!」
えりさん「え~なんで~!」














