2人の「フランクな」ライバル関係
細谷と古賀は自然とライバル関係になっていた。マラソンの細谷、ハーフマラソンの古賀と得意種目は異なるが、10000mの自己記録がともに27分50秒台で、記録会なども同じ組で走ることが多い。
駅伝では最長区間を任される。ニューイヤー駅伝ではこの6年で4回、同じ区間で走ってきた。
▼ニューイヤー駅伝で同区間だった年の成績比較
【細谷成績・チーム順位】
25年2区 区間8位(1時間02分45秒)・14位
24年2区 区間8位(1時間02分44秒)・4位
23年4区 区間2位(1時間04分37秒)・14位
22年4区 区間1位(1時間03分43秒)・6位
20年4区 区間13位(1時間05分14秒)・23位 
【古賀成績・チーム順位】
25年2区 区間4位(1時間02分19秒)・9位
24年2区 区間9位(1時間02分49秒)・12位
23年4区 チーム欠場
22年4区 区間2位(1時間03分54秒)・25位
20年4区 区間11位(1時間05分11秒)・11位
区間順位が1つ違いのことが2回、タイム差が11秒以内のことが3回ある。今年のニューイヤー駅伝で中継した直後には、古賀が1つ年上の細谷に「僕の勝ちですよ」と声を掛けたという。
「真面目な話をすることもありますが、彼とはフランクな雰囲気で高め合える存在です」と細谷は言う。仲が良いからこそ、勝ち負けをストレスなく話題にして切磋琢磨できる。今大会のエントリーリストに細谷の名前を見つけた古賀は「うれしさがあった」と言う。「近くにいたら張り合うと思います。マラソンでもライバルになりたいですし、ハーフでは勝ちたいですね」
代表への思いの強さも2人の共通点だ。細谷は22年開催予定だったアジア大会のマラソン代表に決まっていたが、開催地の感染症拡大の影響で大会自体が翌年に延期され、代表選考もやり直しになった。そして23年10月のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ、パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)では28km手前で激しく転倒し、完走することができなかった。
2カ月弱のインターバルで福岡国際マラソンに出場し、日本人1位をとった。だが日本陸連が定めた設定記録に届かずパリ五輪代表入りを逃した。
「(代表への思いは)一貫しています。意地でも取りに行きたい」
その福岡での日本人1位が、今年の東京2025世界陸上代表選考規定ではプラスに働いている。JMCシリーズ・シーズンⅣの優勝者が現時点では優先して選ばれるが、細谷はその有力候補になっている。
代表への思いは古賀も強い。安川電機は中本健太郎(現監督)が12年ロンドン五輪マラソンで6位に入賞。続く16年リオデジャネイロ五輪にも、北島寿典が出場した。
「僕が入社してすぐ、北島さんがリオに出られて、マラソンはカッコ良い、と思いました。自分もああいったところで走りたい、と。安川電機のマラソン選手である以上、世界に行かないといけない」
山口でのライバル対決は、マラソンの代表先陣争いへとつながっていく。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

















