“日産のプライド”子会社化に反発

上村彩子キャスター:
ホンダと日産、日本を代表する自動車メーカー同士の経営統合に向けた協議について、5日新たな局面を迎えました。この協議、どうやら破談となりそうです。

ホンダと日産は2024年12月から経営統合に向けて協議に入っていました。EVやソフトウェア開発にかかる巨額の費用を分担できることがメリットで、当初は持ち株会社を作り、それぞれが傘下に入るという対等な関係での経営統合となっていました。

しかし、その後、ホンダが日産を子会社化する案を打診。これに対し日産は猛反発し、日産幹部からは「到底受け入れられない」という声が上がっていたといいます。

そして5日、日産は経営統合に向けた協議を打ち切る方針を固めたということです。

日産自動車は、日本最古の自動車メーカーで、「ニッサン・プリンスロイヤル」は約40年間にわたり、天皇陛下の「御料車」として使用されるなど、日本を代表する自動車メーカーに成長しました。

ところが近年では、EV事業が大きな影響を与えています。北米では、充電インフラの不足や価格高騰などにより、EV事業が伸び悩み、中国では、EV市場が発展し安価な現地メーカーに押されるなど、とても大変な状況となっていました。2024年度の上期では営業利益が90%減少する厳しい状況だったわけです。

日産はこの経営不振に対応すべく、大規模なリストラ策を打ち出していました。全世界で従業員を9000人を削減、生産能力を2割削減する方針でしたが、工場の閉鎖には慎重な姿勢を示しており、当初の期日としていた1月末までに具体的な決定や案がホンダ側に示されませんでした。

意思決定のスピードに対し、ホンダ側の関係者は「持ち株会社という形式を出して以降、あまりにも日産に緊張感がなくなった。子会社化で完全に主導権を握らない限り、物事が変わらないのでは」と話します。

ホラン千秋キャスター:
日産が大きな決断に踏み切れなかった背景には何があるのでしょうか。

TBS報道局経済部 梅田翔太朗記者:
ここでもキーマンとなってくるのが、アメリカのトランプ大統領です。日産の主要市場はアメリカです。そこに対しても、ホンダは踏み込んだリストラを求めていました。しかし、相手がトランプ大統領となると、どんな反発が来るかわからず、日産もなかなか決断できなかったと思います。

ホンダが日産に対して投げた要求も、難易度が高いものだったのが、今回の破談へと繋がった要因の一つだと見ています。

井上貴博キャスター:
両者の関係性からすると、ホンダ側はどちらかというと日産を救済する立場で、救済するためにはある程度踏み込んだリストラ計画を作ることを要求していた。しかし、それが手ぬるかったとなると、日産の見立てが甘かったと受け取られるのではないでしょうか。

梅田翔太朗記者:
経営統合するということは、同じ会社になるということなので、リスクは統合する前に削っておきたいですよね。その点が、ホンダの目には「まだまだ甘い」と映ってしまって、このままでは統合できないと、破談に陥ってしまったという印象です。

ホランキャスター:
経営者としての決断のスピードなど、日産とホンダのこの一連の動きについてどう思いますか。

オンライン直売所「食べチョク」代表 秋元里奈さん:
経営統合協議のタイミングで揉めてしまうと、この先は難しいと思います。求めるスピード感を認識して、最初にすり合わせておく必要がありますよね。

日産側に対しては、自動車業界全体が国内に限らず、海外との競争環境が非常に激しくなる中で、このまま沈んでいくのではないかという不安を感じてしまいます。

今回のホンダとの経営統合の案は、日産にとってもチャンスでもあったと思います。プライドなどを一旦捨てて、自分たちの会社がより長く大きく残っていくためにはどうすればよいかという観点で考える必要性を感じました。