路地の長屋にある「下町ゲストハウスとまりぎ」
鄭さんが暮らすのは、再開発地区ではなく、その周囲、住宅は震災後に建て替わったものも多いですが、古くて長いアーケードの商店街や、狭い路地があちこちに残る街です。
そんな路地の一つに面した長屋に、「下町ゲストハウスとまりぎ」があります。運営する小笠原舞さんは8年ほど前、結婚を機に、関東から移り住んできました。

小笠原さんの子供は6歳と、2歳7か月。
自宅はゲストハウスと一緒の長屋で、前の路地は遊び場です。
ベビーカーを押しているとおばちゃんたちが声をかけてきますし、喫茶店や銭湯は子連れで行きやすく、イベントごとが盛んで、子供に触れさせたい体験ができると感じています。
保育所にはいろんなルーツの子供がいます。
街の人の手を借りて子育てしながら、暮らしてきました。
小笠原さんに街について聴きました。
「下町ゲストハウスとまりぎ」を運営する小笠原舞さん
「ゲストハウスも、前に住んでいた人が、すごい挨拶して、すごいコミュニケーションを取ってくださる人でした。なので、なんか多分ずっとこういう感じで続いてきてるんだろうなっていうのは感じてはいました。私たちが、子育てをシェアしている仲間もみんな自営で、家族でいろんな場所をやってたりするので、あいさつとかコミュニケーションとか、大事にしようと思ってるというか、多分そういうのが好きなんでしょうね」。

小笠原さんは保育の現場の体験から、子育て支援の仕事をしながら、同じように長田区に移り住んできた子育て中の女性たちと一緒に、街の魅力を発信する活動も行っています。
そして、一昨年、この街の暮らしを体験してもらい、日常の暮らしをそれぞれに豊かにするヒントにしてもらおうと下町ゲストハウス「とまりぎ」をオープンしました。
同じ長屋にはバー「SAKAZUKI」もあり、夫婦で営んでいます。

小笠原さん
「宿をやってると、いっぱいいろんな人が来ます。特に、子育て層だとやっぱり、どこ行っても注意してたりとか、謝ってたりとかしなきゃいけないっていうのがありがちですが、この街で一緒に喫茶店行ったり、ご飯食べに行ったり、お風呂行ったりとかして、人に声かけてもらうと、自分の住んでる町ではないんですけど、『ここが安心・安全』という、スイッチが入るみたいです。私が話して説明しても、やっぱり体感してもらわないとわからないので、『とりあえず来て』って言える場所ですね」。
「まちづくり」はこれからも続く

新長田駅の南側の地域は、2024年、全ての再開発計画が終了し、30年で人口は増えましたが、商店主からは「震災以前の賑わいはない。本当の復興はこれから」という声もあがります。
下町ゲストハウス「とまりぎ」の小笠原舞さんは「ずっと住んでいる人にもあらためてこの街の良さに気づいてもらい、様々な人たちとつながりを作ってゆきたい」と話します。
多様なルーツの高齢者が過ごすデイサービスセンター「ハナの会」の鄭秀珠さんは「将来も、いろんな人がごちゃごちゃいる街であったらいいなあ」と話していました。
(TBSラジオ 崎山敏也)