「目もくらむような…」標高3000mの峰に天空の吊り橋

ヴィア・フェラータ(鉄の道)と呼ばれる登山法

もうひとつ「鉄の道」と名付けられたものが、イタリアの自然遺産「ドロミーティ」にあります。イタリア語で「ヴィア・フェラータ(鉄の道)」と呼ばれる登山方法で、鉄のワイヤーを岩山に張り巡らせ、そのワイヤーをつたって登っていくというもの。比較的登山経験の少ない人でも険しい岩山を登ることが出来る方法です(ただし岩肌に多数の穴を開けるため、自然環境保護の観点から批判の声もあります)。元々は第一次世界大戦の時に兵士たちが山を越えていくために始まったもので、ドロミーティ一帯が発祥地とされています。ここもアルプス山脈の一角で、標高3000メートル級の岩山が18もそびえているロッククライミングの聖地。

足もすくむヴィア・フェラータ吊り橋

ヴィア・フェラータの登山コースの中には、標高3000メートルの高所に「天空の吊り橋」もあります。番組でもこの橋の上から撮影したのですが、「目もくらむような」という表現がピッタリの映像を記録することが出来ました。

このように鉄は「登山」にも大きな変化をもたらしてきました。山岳鉄道によって登山家ではない普通の人もアルプスの高みへ行くことが出来るようになり、鉄のワイヤーを使った登山方法によってロッククライミングの技術が乏しい兵士でも断崖絶壁を登ることが出来るようになりました。

登山以外にも、鉄が人類の文化に与えた影響をいろいろと紹介する特別企画「世界を変えた鉄」、ご期待ください。

執筆者;TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太