日本の利上げの『終着駅』は?
次の利上げの時期だけでなく、日銀がどこまで利上げを進めるつもりなのかも、大きな焦点です。その「到達点」「終着駅」はどこなのか。
景気を熱しも冷ましもしない中立金利は、物価上昇率+自然利子率と言われます。物価上昇は2.0%が目標値です。自然利子率は、潜在成長率に類似するもので、日銀の推計では、日本の場合、マイナス1.0%からプラス0.50%に間だろうとされています。
単純に足し算をすれば、日本の中立金利は、1.0%から2.50%の間ということになりますが、今の時点で日本の政策金利が1%を大きく超えるところまで上げられると思っている人は、あまりいないように思えます。
政策金利が急激に高くなれば、国債の利払いが急増して財政が持ちませんし、国債を大量に保有する日銀のバランスシートも悪化するわけで、政府の財政赤字の縮小や日銀の国債保有の減少といった別の条件が必要になってくるように思います。
それに、そもそも景気が悪化すれば、中立金利より緩和的にならざるを得ないわけで、まずは、理論値の最低値である1.0%まで行けるかどうかが、当面、焦点となるでしょう。
金利が上がるのは、デフレ脱却の証
過去30年の「天井」「壁」だった0.5%から先の利上げは、文字通りの「未体験ゾーン」です。しかし、それは過去30年物価も賃金も上がらなかった日本経済が、デフレから脱却したことの証でもあります。
ここから先の利上げには、デフレ脱却の「確信」が必要なように思えます。「確信」とは、家計や企業が、物価上昇に釣り合った形で、賃金や売り上げが増えていると思えるようになっているかどうか、ということです。実質賃金がマイナスのままでは、とても、そんな「確信」には至らないでしょう。
日本経済を前向きにまわしていくための政策努力は、なお必要であり、久々の金利の正常化に安堵している余裕などありません。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)