日本政府は規制できるか?我々は「つながり」を断つべきか?
SNSの荒廃は、2024年から世界レベルの問題になっていた。各国で規制の動きがあり、ブラジルは一時期Xを国内から締め出した。これにはさすがのマスク氏も折れ、再開に至った。
オーストラリアでは16歳未満のSNS利用を禁止する法案が可決され、今年11月に施行される。各SNS事業者がどう対応するか、注目だ。
日本でも総務省の有識者会議「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」で議論が進んでいる。「対処」とあるように、規制に踏み込む前提と思われるが、具体的には各プラットフォームにモデレーションを求めることになりそうだ。つまり、自主的なチェックと対応を事業者自身が行うと。
Meta社は先述の通り、ようやく2024年9月から日本でも始めたファクトチェックを米国に続いて廃止してしまうかもしれない。
各事業者に求める要求と、それぞれの方針が噛み合うかは読めない。特にマスク氏は簡単に意思を曲げないので、対応は望めないのではないか。
政府の要望がMetaやXと対立した時、どうなるか。日本製鉄のUSスティール買収への米国の反応のように、国家レベルでの対立に向かう可能性だってある。なにしろマスク氏はトランプの支援者なのだ。大統領の後ろ盾で何を言いだすかわからない。
メディアの成長を減速させかねないSNS不信
SNSへの不信は、メディア運営にも大きく影響を及ぼしそうだ。
ネット上でコンテンツに触れてもらうために、SNSは欠かせない。テレビや新聞もネット上にメディア展開し、Xアカウントを持って記事の拡散に努めている。SNS抜きでは読者を獲得できないといっても過言ではない。特にXの荒廃が進みユーザーが退出していくと、記事へのアクセス数が大きく減少する可能性は高い。
SNSはネット上でのメディアのエコシステムの血液のようなものだった。血流が止まると、メディアの生命も絶たれるかもしれないのだ。
メディアだけではない。ネットを前提に生まれたベンチャービジネスで、メディアと同じようにSNSを血流としてきたものは多い。SNSが信じられない空間になればなるほど、ベンチャー企業の成長にも支障が出かねない。
SNSは、2010年代を中心にした短い時代に成立した、幻のような空間だったのかもしれない。いま、私はそう考えはじめている。