イーロン・マスク氏はXを罵詈雑言のマスメディアにした
ザッカーバーグ氏が権力におもねったのなら、Twitterを買収しXに変えてしまったイーロン・マスク氏は権力者そのものになろうとしている。
選挙期間中はトランプ氏の有力な支援者となり、大統領就任後は要職(政府効率化省のトップ)に就く。そんな人物が、SNSという個人が発信する場を運営しているなんて、許されるのだろうか?
そもそもマスク氏は、SNSを趣味嗜好の近い人とつながりを生む場から、罵詈雑言が飛び交い犯罪の温床にもなる空間に変えた張本人だ。Twitterの名称をXに改めただけでなく、数々のルール変更、メニュー変更を行い、それらはことごとく改悪だと私は受け止めている。
マスク氏はそれまでの広告モデルに有料モデルも取り入れたいと考え、プレミアムユーザー制を導入。投稿へのエンゲージメントに応じて収益を配分するようにした。
その結果、やみくもにインプレッションを得るために無意味な投稿をまき散らす「インプレゾンビ」が大量に発生し、一気にXは不気味な投稿だらけになった。
そしてSNSとしての在り方を180度変えてしまったのが、「おすすめ」メニューだ。
Twitterは、自分がフォローしたアカウントの投稿を読むツールだった。どんな傾向の投稿が読みたいか、選ぶのはユーザー。つまりユーザーに主権があったのだ。ところがXでは「おすすめ」が一番左に配置され、自分がフォローしてもいないアカウントの投稿をいきなり目にするようになった。
表示されるのは、ある程度リプライや「好き」がついた投稿で、どぎつい内容が多い。著名人への批判や不満、政治的な内容、特定の思想信条に根ざした内容、そして家族への愚痴や時にはDVの暴露、さらにポルノ的な投稿まで流れてくる。
もちろん前からこうした投稿はあったし、それが炎上することもあったわけだが、「おすすめ」ではどぎつい投稿が次々に流れてくるので、炎上が起きやすくなったと私は捉えている。
Twitterにあったユーザーの主体性が失われ、Xは炎上の「芽」を垂れ流す、エグいマスメディアになってしまった。
こんなSNSはもうSNSとは言えない。FacebookもXも、もはや居場所にしていられない。同じように考える人は多いようで、米国生まれながら健全な新生SNSであるBlueSkyや、12月に突如登場した日本製SNS、mixi2などが急激にユーザーを増やしている。だがなかなか代替にはならず、どうしたものかと悩んでしまう。