テレビや新聞は見ない若者たちがSNSで投票先を決める

選挙結果が無効にはなったが、ルーマニア大統領選挙の1回目の投票では、テレビや新聞を見ない若者がSNSでの情報を判断材料にして投票し、ジョルジェスク氏を首位に導いたと言える。

ルーマニアでは法律で「選挙期間中は公正・公平な方法で選挙運動の報道を確保する義務がある」と定められている。ジョルジェスク氏が主要メディアであまり取り上げられなかったのは、泡沫候補だったからだと推測される。

日本でもテレビの選挙報道は「政治的公平性」を強く意識している。私も長年日本で選挙報道に携わってきたが、候補者の扱いについてはとても敏感になっていた。

そんな中で、有権者の手元のデバイスに直接主張を伝えられるSNSの活用。とても便利な一方で偽情報の拡散といった危うさもある。

外部による介入などで選挙結果が歪められた可能性に直面するルーマニアや、EUがどのような対策を講じるのか。5月に実施されるルーマニアのやり直し大統領選挙も現場を取材するなどし、さらに注目していきたい。

〈執筆者略歴〉
仁熊 邦貴(にくま・くにたか)
2005年にMBS(毎日放送)に入社
大阪府警記者クラブキャップや神戸支局長を務めた後、
特集デスク、ニュースデスク、JNN担当デスクなどを歴任し
2024年10月からJNNパリ支局長

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。