■日本防衛の最前線 南西諸島における“抑止力”


台湾から約110キロ、日本の最西端に位置する与那国島。9月21日、浜田防衛大臣が視察に訪れた。防衛省関係者によると「大臣は防衛の最前線である与那国島の視察にはどうしても行きたいという意向だった」という。陸上自衛隊員など約200人が駐在する与那国駐屯地は、2016年に配備された。以降、中国を念頭に“抑止力”を強化する動きが着々と進んでいる。

航空自衛隊は2022年4月、与那国駐屯地に、上空での戦闘機や輸送機の飛行情報を収集する「移動式警戒管制レーダー」を正式配備。2017年から、宮古島分屯基地第53警戒隊の固定式レーダーの更新作業に合わせて、移動式レーダー「J/TPS102」を暫定配備していたが、レーダーのカバー範囲を広げるため、宮古島の分遣班として正式に配備した。

ある航空自衛隊関係者は「最西端のレーダーだ。もし配備されなければ、台湾に近い与那国島の上空を見ることができないということ。それは何を意味するのか。とても大事な部隊だ」と、中国への警戒感を暗示する。

なお防衛省は、23年度の当初予算の概算要求で「自衛官の任務や勤務環境の特殊性を踏まえ、処遇を改善」するとしているが、防衛省関係者によると「離島や僻地に偏在するレーダーサイトに勤務する隊員に対して支給する『レーダーサイト勤務手当(仮称)』の新設」を事項要求するという。防空レーダー態勢の強化が狙いだ。
  
新しい安全保障の領域への対応も進む。4月7日、中国の電子戦機「Y-9」1機が、与那国島を含む南西諸島の南側の太平洋上を飛行。自衛隊が行う対領空侵犯措置において、初めて確認されたものだという。こうした中、防衛省は23年度、与那国駐屯地に小規模な電子戦部隊の配備を予定している。平素から電波の収集や分析を行い、有事の際は相手の電波利用を無力化することで、日本側の作戦を有利にする任務も行う。