2050年に国土の大半が水没するツバルは「デジタル国家」へ

このまま気温の上昇が続くとどうなるのか。この連載の第4回『ツバル外相がスーツ姿で海中から訴えた危機』で触れた南太平洋の島国ツバルは、平均標高が海抜2メートルしかない。この30年間で海面が15センチ上昇していて、今後について悲観的な予測が出ている。

ツバル (by iStock)

ツバルの住民の約60%が生活しているのがフナフティ環礁。アメリカ航空宇宙局(NASA)の科学者は、2050年にはこの環礁の半分が毎日満潮時に海面下に沈むと予想している。また、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2050年までに海面が30〜50センチ上昇する可能性があると報告していて、ツバルの多くの島が水没する可能性がある。

ツバルは2030年までに電力を100%再生可能エネルギーにする目標を掲げているほか、海岸の侵食を防ぐための防波堤や植林活動、土地の人工的な「かさ上げ」などを行っている。それ以外に注目を集めているのが、「デジタルツバル」計画だ。

この計画は物理的な国土が失われる最悪のシナリオに備えて、国土や文化、国家の主権をデジタル空間に保存し、再現するもの。ツバルは2022年11月の国連第27回気候変動枠組条約締約国会議(COP27)で世界初のデジタル国家を目指すことを表明し、世界各国に理解を求めた。すでに国土の3Dスキャンを終えていて、今後は仮想3D空間のメタバース上にツバルの島々を再現するほか、電子政府化やデジタルパススポートの開発なども進めている。