カビを削って食べたことがあるのですが…
ー餅に生えたカビを削って食べたことがあるのですが、大丈夫でしょうか。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「お餅について考えると、うっかり少し食べてしまった…くらいで中毒が発症することはおそらくないと思いますのでご安心ください」
「食べて数日以内に激しい腹痛や嘔吐、下痢のような症状がなかったのであれば、急性毒性はなかったと考えていただいて結構です。ただ、まだ残っているお餅があるのであれば、心配ならばもったいないですが捨ててしまった方が安心かもしれません」
「カビ毒は、カビが生えているから必ずいるものではありませんが、ごく低確率でいる『かもしれない』ものですので、過剰に心配はしなくていいものですが、リスクが少しでもあるなら遠ざけたい、という心理はありますよね」
「ちなみに目に見えるカビの部分をとっても、菌糸が残っていることが多く、私も、カビをはやしてしまったお餅の表面を削って残ったところを食べてみると、ちょっと埃っぽい味がしました」
【画像③】ペニシリ(菌糸)
ーカビが生えていたら、食べないほうが無難ですね。
(大野さん)
「怖い話ばかりしましたが、日本ではこのAspergillus属を古来から利用してきてきました」
「Aspergillus oryzae(アスペルギルス オリゼー、日本酒を作る二ホンコウジカビ)、Aspergillus luchuensis(アスペルギルス ルクエンシス、泡盛などを作るクロコウジカビ)などがその代表ですね」
「これらの菌は私たちの身の回り、おうちの中、エアコンや冷蔵庫などから分離されることもあります」
「さらにこぼれ話ですが、海外では前述のAspergillus flavusの事件があってから、日本酒を製造する際のAspergillus oryzaeがアフラトキシンを生成するかものかもしれないので、輸出にはかなり厳しい規制があったところもあったとされます」
「1970年前後に、日本酒を作るコウジカビはアフラトキシンを生成しない、というのを証明したのも日本人で、この証明からだんだんと日本のお酒の輸出規制が緩み、今では英語で「Japanese rice wine」、さらに「SAKE」と呼ばれて海外でも日本のお酒は親しまれるようになっています」