韓国出身の脚本家、イ・ナウォン氏がドラマ『地獄の果てまで連れていく』で完全オリジナル脚本に挑戦。本作は生まれつき悪魔的な性格を持つ麗奈(渋谷凪咲)に人生を壊された主人公・紗智子(佐々木希)が、壮絶な復讐に身を投じるスリリングなドラマだ。

1988年韓国生まれのナウォン氏は、茨城県やアメリカ・ポートランドで幼少期を過ごしたのち、韓国中央大学で劇作を専攻。2016年に日本に渡り、東京藝術大学大学院で坂元裕二氏に師事した。テレビシリーズ『明日、私は誰かのカノジョ』や映画『熱のあとに』など数々の話題作に携わる彼女は、日韓両国の映像制作の違いを知る稀有な視点を持つ。

異なる文化で脚本を学び、それぞれのドラマ制作現場を経験してきたナウォン氏。韓国と日本のドラマ制作の違いをどう見ているのか。そして、彼女がオリジナル脚本で描きたかった“人間賛歌”とは何か。その答えを、創作プロセスを通じて紐解いていく。

日韓の制作スタイル、その違いと生まれるメリット

──韓国のご出身ですが、日本と韓国のドラマ制作の違いを感じることはありますか?

韓国では、一度に複数の作品を同時進行することがほとんどありません。私がアシスタントを務めていた時期も、脚本家、監督、役者のすべてが一つの作品に専念するスタイルが基本でした。映画やドラマは、それぞれの現場に全力で集中するのが暗黙の了解とされているんです。韓国の同業の友人に「日本では同じタイミングで複数の作品に参加しているよ」と話すと「どういうこと?」と驚かれることが多いですね。

──制作スタイルの違いは、クオリティに影響がありますか?

どちらにもメリット・デメリットはあると思います。個人的には、一つの作品に専念するのは、丁寧に脚本作りが出来る、達成感が凄いというメリットがありますが、制作期間中に人間関係や制作環境に疲れたとき、逃げ場がないのはつらいかもしれない…と感じます。日本のように、ほかに関わっている作品があれば、気分を変えて仕事ができるメリットもあるのかもしれません。それはそれで作品ごとに執筆スタイルを切り替えないといけないので、結構大変なところもあります。