家族も止められない「ロマンス詐欺」

娘とともに取材に応じてくれたのは大島香苗さん(仮名)。大島さんも50代。ロマンス詐欺の被害に遭いましたが、今も相手を信じる気持ちが消えていません。

Q.メッセージが来たときはワクワクした?
大島香苗さん
「本人(人気アイドル)かなと思ったんで」
大島さんの娘
「精神科に通ってもらっているという状況」

家族が被害に気づいたのは、銀行からの1枚の通知がきっかけでした。

「詐欺被害に遭われている可能性がございます。送金額は合計で1600万円を超えております」

15年前から韓国のある人気アイドルのファンだったという大島さん。その人気アイドル本人を名乗る人物から2023年7月、SNSにダイレクトメッセージが届きました。

<DMでのやりとり(再現)>
韓国の人気アイドル(偽物)
「あなたはいつから私のファンですか?」
大島さん
「2009年からファンです」

人気アイドル本人からだと思った大島さんは、嬉しさのあまり連絡を取り合うように。すると、相手から「私と会うためにはお金が必要」などとメッセージが届き、指定された口座にお金を何回かに分け、合わせて1800万円を振り込んでしまいました。

大島さんの娘
「父親の母が亡くなったときの遺産。一番下の妹が貯めてた学資保険。あと消費者金融から借りたお金と…」

大島さんは家族のお金まで使い込んでいたのです。その上、娘が被害に気づいて警察に相談した後も、大島さんは相手とひそかにやりとりを続けていました。

<LINEのやりとり(再現)>
大島さん
「あなたに会うためにいくらなの?」
韓国の人気アイドル(偽物)
「お店に行って、ギフトカードを買ってください。支払える金額ならいくらでも構いません」

「彼に会えるなら」と、電子マネーを買い続けていた大島さん。

さらに、家族がスマートフォンを没収する度に、大島さんはひそかに新たなスマホを契約していたのです。

大島さんの娘
「(スマホの台数は)6台ですね」
「何度も何度も何度も何度も繰り返されて、いつになっても抜け出してくれない。なんで、いきなりどうしてこんなに変わってしまったのか」

大島さん
「娘とかの気持ちは届いてるんですけど、私がそれに応えられない。申し訳ない…」

家族の生活まで狂わせる「ロマンス詐欺」。警察庁は「詐欺の手口は巧妙になっている」「会ったことがない人からお金の話をされたら注意してほしい」と呼びかけています。

(TBSテレビ 社会部 小倉直樹)