織田裕二からアスリートへ「あなた以上にすごい日本人はいない」
織田:パリ(オリンピック™ )自体の雰囲気もすごくよかったよね。お客さんも陸上の楽しみ方をわかっていると言うか。途中ご飯買いに行ったり、お酒飲みながら見たり。
北口:ずっと盛り上がっている状態が続くのがすごかったですね。本当に朝から晩まで。
大盛り上がりを見せたパリ五輪。その熱がいよいよ東京にもやって来る。アンバサダーとして目指すのは全日程会場を埋める、”9日間フルスタジアム”だ。
織田:そんな大会になったらいいよね、東京世界陸上も。固い感じにならず軽い気持ちで出入りできるくらいの。そういうのも俺は好きなんだよね。
サニブラウン:近く通って「お、なんかやってるな」って感じで楽しむのがちょうどいいかもしれないですね。
織田:色んな競技の人が集まる五輪は4年に1回のお祭り、世界陸上は2年に1回の真剣勝負って、僕は分けているんですよ。最初は世界陸上も4年に1回だったけど、それだと一番のピークが合わない選手もいるから2年に1回、真のチャンピオン決めようよっていうのがそもそもの成り立ちだし、僕の中で世界陸上は”真のチャンピオン”を決める大会。それで東京大会は34年ぶり、今回を逃すと選手として迎える東京大会はもう二度とないじゃない。大阪大会(2007年)は、選手たちが終わった後にあまりいい表情をしていなかったのを覚えているんですよ。日本代表ってことを背負ってしまって、みんなプレッシャーにやられていつも以上に良いパフォーマンスができていなかったと感じた。それと同じことをみんなには繰り返してほしくない。だから、アンバサダー辞めましょう(笑)
一同:(笑)
サニブラウン:辞めます?
織田:だから、アンバサダーは息抜きだと思ってください。そのくらい楽しんでほしい。というのは、すごいプレッシャーを感じちゃうんだけど、あなた以上にすごい日本人はいないんだから堂々としていていいんだよって。
サニブラウン:いつもそうです。
織田:そうだよね、サニは全く問題ないと思う(笑)観客の立場から見ると、生で観る世界陸上ってテレビで見るのとはもう全く違う。3つ同時でやっているんだよ。全部の種目を見るのが難しい、本当カオス!僕が勝手に熱く語っていますけど、皆さんなにかあります?(笑)
田中:でも、アンバサダーになって勝手に「頑張らないと」って・・・
織田:頑張らなくていい。
田中:(笑)選手として楽しめたらいいなって。

織田:小さいころに感じた“楽しい”という瞬間を観客に伝えてあげられたらそれでいいと思う。
北口:私はプレッシャーとか今まだ何も感じていなくて。
織田:一番感じているんじゃないかなって思ってた。感じなきゃいけないんじゃないんだよ。感じちゃうんじゃないかって。世界一になって、もうそれ以上ないんだから。
北口:でも、なんかダイヤモンドリーグ(世界最高峰の陸上競技ツアー)で紹介されるときに、世界チャンピオン、五輪チャンピオンって言われて、その時に「そういえばそうだったな」くらいの感じで出ているんで。あまり気にしていないです、タイトルが付いたからと言って。
織田:なるほど。次の目標ってどう考えているの?
北口:一番近くではアジア記録、あと40センチ…何だったかな?
※アジア記録:2019年呂會會(35、中国)の67m98。北口のベストは67m38
織田:自分の記録に40センチ足せばいいんじゃないの?
北口:いや、適当に40センチって言ってます。でも67mちょっとくらいだったと思う。自分の記録も覚えてられないんです(笑)
織田:今の会話で北口さんの強さがわかりました。記録があと何センチとかそのくらいでいいんですよ、すぐに私が抜くからってくらいの心構えで。どうですか橋岡選手。
橋本:やっぱ「パル(北口の愛称)強ぇな」っていうのを今感じました。
織田:ごめんね、話それちゃって(笑)東京大会に向けてサニはどうしたいとかあります?
サニブラウン:それこそ初めて見た世界陸上北京大会(2015年)は、観客が多すぎてスタジアムに人が入りきらなくて、通路も階段にも人が立っていて。それを日本でやりたいんですよね。子どもたちも学校から呼んでいただいたり、本当に遠足程度の感覚でもいいから来てほしい。
織田:お客さんと選手の相乗効果でパフォーマンスが良くなったりするよね。そういう意味ではお客さんたちもたくさん陸上を見ていただくと、更に選手のパフォーマンスも上がると思うんだよね。
織田:橋岡選手は東京世界陸上に向けて、どう盛り上げていきたいですか?
橋岡:アスリートとして記録を出すこともひとつですし、それをSNSしかり人の目に触れやすいところで情報を発信していくというのが、まずは第一かなと。
織田:知ってもらうことだよね。
橋岡:はい。知ってもらわないと、世界陸上があるって言われても「え?選手知らないし、競技知らないし行かないよ」ってなると思うので。残り1年ですけど、まずは僕の事を知ってもらうためにも結果が重要かなと。あとは、走幅跳を知ってもらうことから。

織田:みんな知っているんだけどね。授業とかでやっているから。
橋岡:そうなんですけど、ただ授業でやるよりかは紹介として僕の動画を使ってもらって、トップはこれくらい跳ぶんだよとか。
織田:ちなみによく跳ぶコツとかある?
橋岡:ちゃんと走って跳ぶことです。
織田:え!?それだけ!?
橋岡:コーチからそう言われています(笑)
織田:踏切って難しいじゃん。あれってもっと短くした方がいいじゃないの?
サニブラウン:それは実際に、橋岡もコーチに言われています。
織田:だって、もうトップスピード乗れてるじゃん!って思う選手けっこういるよね。
橋岡:まぁなんですかね。自分の気持ちいいところというか、感覚というか。
織田:もう革命起こしちゃいなよ!5歩でポーンと跳んでさ。
橋岡:できたら最高ですけどね(笑)
織田:サニは東京大会に向けてアイディアありますか?
サニブラウン:陸上って簡単な競技に見えますけど、意外と簡単すぎて誰でもできるだろって思われている部分もあると思うんですよ。陸上競技のコアな部分、100mだったら自分たちは40歩ちょっとで走っている。一歩の歩幅が2mを超えていたりとか、10mを1秒以内で走っているとか。
織田:100mは誰でも走れる。だけど、一歩を2mとか10mを1秒以内とか、それは絶対に無理だから。どれくらい凄いかってところだよね。
サニブラウン:そうです。勝負なんて髪の毛一本くらいの差で決まるじゃないですか。
織田:だって、たまに1000分の1秒とかでも同タイムなんてあるもんね。なんだそれって。テレビ見ちゃうと速い人がみんなで競っているから、あまり凄さを感じないんだよね。
サニブラウン:特別に感じないんですよね。
織田:だから、俺の若いころの映像があればね。合成してサニの横で走らせたんだけど。
サニブラウン:あるんじゃないですか!?

織田:俺も昔は速かったんだよ。負け知らずよ学校じゃ。年取ったら好きな事言えるから(笑)北口さんはどんなアイディアがありますか?
北口:せっかく海外からもお客さんが来ていただけるのなら、日本には地方のいいところもたくさんあるんで。美味しい食べ物だったり、文化だったり。そういうものを知ってもらえるブースを出して、海外のひとたちも楽しめて、子どもたちにとってもテーマパークのように楽しめるようなものを競技場の周りでやれたら。
織田:いいですね、ぜひやりましょう!田中さんはどうですか?
田中:もちろん日本人の方にもたくさん観に来てほしいんですけど、いま外国人観光客の方がすごく増えているので、日本にたまたま観光に来ている方にも思いつきで来られるようなシステムがあってもいいなと思います。世界陸上を目当てに来た観光客の方々にも、もっと日本の観光をしやすいようなシステムとか、そういったものを上手くミックスできたら日本の良さも世界に発信できると思います。あと、街を広告でジャックしたり。
織田:それすごくわかる、渋谷くらいから国立競技場までそういうストリートを作っちゃますか!大賛成です!