歴史的活躍で米側の見る目が変わった2021年
大きく“潮目”が変わったのは2021年だった。当時の大谷は右肘のじん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)から投手復帰2年目。開幕序盤に投打同時出場を解禁し、開幕から本塁打を量産していた。
当時のジョー・マドン監督や大谷以外の選手の会見で、日本メディアが大谷の名前を出さずとも、米メディアが大谷を絡めた質問を投げかけるようになっていた。
「Don’t take it for granted.(当たり前だと思わないでほしい)」。マドン監督が大谷の二刀流についてこう口酸っぱく語っていたことも、初めて投打同時出場を見る米メディアに少なからず影響を与えていた。
この頃、新型コロナ感染拡大の影響で取材は全てオンラインだった。シーズン中の日本とアナハイムの時差は16時間もあるため、日本に拠点を置く私のような記者は当然、所属会社から海外出張が制限され、早朝にパソコンに向かう日々が続いていた。
毎日のように本塁打を打つ大谷と、それに伴う米メディアの質問内容の変化は手に取るように分かった。米メディア、日本メディアの順での質問が一般的な流れだったが、日本メディアが質問する頃には、もう既に大谷関連の質問は出尽くしてしまっていることが何度もあった。
大リーグ機構(MLB)の大谷に対する見方も変わった。同年の10月26日のワールドシリーズ第1戦前、大谷は大リーグで7年ぶりとなるコミッショナー特別表彰を受けた。投打の二刀流による歴史的活躍を評価された。
日本選手では2005年イチロー(マリナーズ)以来、2人目の快挙だったが、1シーズンの活躍のみによる選出者は希少。就任7年目で初の同賞授与となったロブ・マンフレッド・コミッショナーは「あまりにも特別だった。この1年を称えないのは間違い。翔平のような国際的スターの出現は我々にとって完璧なタイミングだった」と称賛した。