今後の金利環境をめぐって

──12月半ばに今年最後の日銀会合があります。日米の政治状況などから一部では本会合で追加の利上げが行われるのではないかとの見方も浮上していますが、南社長はどのように見ていますか。

日銀の専管事項ですので我々がどうこうという話は当然ないんですけども、去年あたりから金利の上昇局面に向けた転機はいずれ訪れるだろうということで、実は社内で様々なタイプのシミュレーションをやらせていただいていて、段階的にまだ上がっていくステージにはあるだろうと。当然日本の景気動向や物価賃金、それから世界的な動向を含めていろんなパラメータ変数があるんですけども、それを少しずつこなしながらおそらく一定程度の金利水準までは引き上がってくるであろうという予想のもとにいろんなシミュレーションをしています。

日本の今の状況を考えると、上昇のスピード感は少し時間を置きながら段階的に行っていくというのが我々が持っている基本シナリオですので、一定程度の時間軸の中で、日本のインフレ率、それから潜在成長率、いろんなものを考えていたときにその水準までは上がってくる可能性が高いのではないかなと、それに向けて我々自身がどうやって機動的に対応できるかということと、お客様にどんなご提案や価値を提供できるかということは一生懸命本当に考え続けてるのが現状です。

──物価高が続く中、日銀内部では「利上げに対する理解がなかなか国民から得られない」と悩む声も聞かれます。利上げをすることの必要性やメリットを発信するためにはどんなことが必要だと思いますか。

日本国内は30年来のデフレ環境が長く続いてきたということで緩やかなインフレに対する耐性や起こっていることに対する理解が、どうしても過去に引きずられる傾向はやっぱりあると思います。

先ほど住宅ローン金利の話をいただきましたけども、預金サイドは普通預金も含めて広くあまねく金利のある世界が戻ってきていることについては国民の皆さんにとってもプラス面は当然あると思うので、全体感を俯瞰したバランスの問題をどういうふうに捉えるかということと、それからもう1回日本を再成長軌道に乗せることを考えたときに、やはり緩やかなインフレの中で賃金と物価が関連性を高めながら拡大していくという流れが、いろんな新しいチャレンジや新しいイノベーションを生む素地にも繋がってくるというふうにも感じます。なので国も日銀も、我々企業も、国民の皆様も、緩やかなインフレを前提に考えたときに、それぞれの立場で理解をしながら次の再成長に向けてどういうふうに歩んでいくのかを考えていくのが大事なところじゃないかなというふうに思います。