「金利のある世界」で変わる銀行のあり方

──金利の話で言うと、我々にとってもう一つ身近なものが預金だと思います。いままで“お荷物”だった預金に金利がつくようになったことで各銀行が預金集めに力を入れ始めている中で、りそなグループとしてはどんな戦略を打ち出していく考えですか。
間接金融の中で調達サイドの預金というのは極めて大事な部分でありますし、ここをどうやって粘着性のある安定的な預金を調達させていただけるかということが銀行ビジネスにとって一つも本当に大きなコアとなるところです。
やはり王道は、個人のところについては家計にいかに深く寄り添うことができるかということ。それから法人のお客様のところは、商流の中でりそなグループが提供させていただく様々な商品・サービス・機能をご利用いただくようなシーンをいかに拡充していくのかということが、実は遠回りのように見えて安定的なリテール預金を獲得していくという意味では極めて重要なことだと思っています。もう一度原点に戻って個人の家計、それから法人の商流に根ざした形のビジネス展開を行っていく必要があると思っていまして、これが一つ大きな戦略になってるということです。
それともう一つは、金利が上がっていく局面でどこかでお客様の金融行動が一気に変わって、例えば普通預金から定期預金へのシフトが始まったり、あるいは今まで短いところで運用されてたお客様が比較的長い時間軸の中で定期預金を運用されるというような変化も起きてくると思います。資産運用立国という看板がかかる中、国民の皆様も人生100年時代を念頭にご自身の資産を緩やかなインフレの中でどうやって長期的に運用していくのということに対して圧倒的に意識が高まっている状況だと思いますので、ご預金での運用と、ファンドラップや投信、つみたてNISAなどの運用商品への移行がどんなスピードで広まっていくのかということについてもかなり留意していく必要がある局面だと思ってます。
──いまお話しいただいた「家計に根ざした戦略」の一環だと思いますが、11月半ばに奈良にりそな!n(イン)という新しい形の店舗がオープンしました。商業施設の中に出店し相談業務がメインということで、どういう狙いがあるのかをお伺いします。
お客様の金融行動がかなり大きく変わってきている背景にある一つ大きなものは、やはりデジタル化です。ほとんどのお客様がスマートフォンの中に非対面のチャネルをお持ちになっている状況の中で、我々は元々りそなグループとして地域軸とリテール軸をすごく大事にしている銀行なんですけども、ただこの世の中の変化に応じて、地域の営業店─リアルチャネルがある意味というのがどんどん変わってくる時代にあるというふうに思っています。
十数年前まではお手続きをしていただくためにご来店いただくお客様も非常に多かったですし、お待ちいただく時間も長かったり、店舗でお客様に価値を提供させていただくことが多かったと思うんですけども、今後は地域のお客様に我々が提供できる価値が何かということをもう1回考え直すことが必要なタイミングに来ていると思ってます。
その意味で、リアルと言われている営業店でフェイスtoフェイスでお会いをさせていただき様々なソリューションを提供させていただくという局面と、日常の金融─例えばお振り込みや納税は明らかにデジタルシフトが加速していくというこの大きな流れの中で、リアルとデジタルが融合して、これまでになかったようなお客様への顧客体験、それから価値提供を地域に根ざした営業店とデジタルが一緒になって、どうやって提供させていただくのか。試行錯誤を繰り返しながら時代に合った接点を拡充していく、その第1弾がりそな!n(イン)です。これからもおそらく店舗のスタイルやあり方、地域での存在意義は変わっていくと思いますので、これをまず起点にまた次に向けて新しいチャレンジを始める局面と思っております。