介護の倒産が過去最多 厳しい経営状況の中でM&Aは増加
ー今年、介護事業者の倒産が過去最多となった。人手不足や物価高などの影響があると見られるが、そんな中でM&Aは増えている。介護業界はどういう局面を迎えているのか。
今年、倒産件数は過去最多となっているが、それは買い手がつかなかった事業所が倒産していて、その何倍も何十倍もM&Aの売り手市場に出ていると考えてもらえたら想像しやすいのではないか。譲渡金額として1円で売りに出ているものも珍しくない。
2000年に介護保険制度が始まり、民間や株式会社を問わず多くの方が介護サービスを提供できることとなり、起業が相次いだ。大手だけではなく、例えば、脱サラしてその退職金で夫婦で小規模な介護事業所を立ち上げるようなケースも多くある。そういった方々が高齢化で、次の世代に自分たちが大切にしてきた事業所を譲り渡したいと考えた時に後継者がおらず、泣く泣く手放さざるを得ないという状況もある。
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M&A調査のレコフデータによると、医療・介護サービス業界で行われたM&A件数は、増加傾向で2023年には149件となっている。
東京商工リサーチの調べでは、介護事業者の倒産件数は、今年1月から10月の間で145件に上り、残り2か月を残した状態で、これまで最多だった2022年の143件を上回る事態となった。人手不足や物価高や燃料代などの運営コスト上昇に加え、2024年の介護報酬マイナス改定の影響が出ている可能性があるとしている。
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ー経営は厳しいがそれでも、M&Aを利用する人が多くいる。買い手にとってどのようなメリットがあるのか
前提として、小規模な事業者が多いため、大きな金額を投資せずに初期費用を抑えた形で介護業界に参入することができる。また、「利用者」とそれを支える「職員」がそろっている状態でもあり、介護施設の設備などもそろっているところから、経営権だけを買うだけで良いというメリットがある。介護の専門知識を持った職員がいるので、専門的な知識がなくても異業種からも簡単に参入できるという特徴もある。
