40年前とは違う「好きな書籍の種類」

一方、有職者は労働で時間拘束されているので、なかなか本が読めないのだろうか、などとボンヤリした想像も浮かびます。

そうはいっても有職者の「読書好き」は2~3割いますし、それ以外の人が一切本を読まない、というのも考えにくいところ。

では、有職者で「読書好き」を自認する人とその他の人では、読んでいるものがどれくらい違うのか。それを、TBS総合嗜好調査の「好きな書籍の種類」という質問で追いかけてみました。

具体的には、50代以下の有職者を「読書好き」と「その他」に分けて、いろいろな書籍の種類の中で好きなものをいくつでも選ぶ質問を集計し、両者の差を見てみます。

「好きな書籍の種類」も長く続いている調査項目で、直近の2023年調査では「この中にはない」も含めて選択肢は20個。選択肢数が16個だった40年前(1983年)と比較しますが、言い回しが若干変更された選択肢もあり。

40年前と直近で、「読書好き」の選択率が高い順に上位8つずつを並べたのが、次の棒グラフです。

40年前、「読書好き」の有職者が最も好んだのは「専門書」でした。「学術書ほか職業に直結したもの」と注釈があるように、それは“仕事のために読む本”であり、“仕事のために本を読むのだ”という姿勢がうかがえます。

これに続くのが、「日本の文芸作品」「人生・教養書」「日本の歴史」。まさに“大人の教養”という印象で、当時は大人が「読書好き」というなら、こうしたものを読んでいる必要があったのかも知れません。

それに符合するように、「その他」の人のそうしたジャンルの選択率は軒並み低く、唯一逆転しているのが「趣味」の本でした。

そこから40年。今の「読書好き」有職者では「マンガ・劇画」が堂々1位。そこに「実用書」「ミステリー」「料理本」と、“自分の楽しみのために読む本”が後続。

今の「その他」の人は、40年前から輪を掛けて本を読まないようで、「趣味」の本はおろか「マンガ・劇画」でさえ「読書好き」より低選択。

質問では「電子版を含む」としていますが、例えばインターネットの書籍定額サービス利用者は、それを「書籍」としてイメージしておらず、読んでいるジャンルに丸がつかなかったのかも知れません。