「経営はプロに任せたい」M&Aで会社を譲ったが…

愛知県でデイサービス施設を運営している水落美香さん(57)。

合同会社を1人で立ち上げたのは、約10年前。小規模ながらも地域に寄り添う、家庭的な雰囲気を大切にしてきました。

入浴剤の泡にこだわったお風呂も売りの一つです。

利用者(90)
「すっきりした。腰が痛いもんで。家に一人でいるより、ここに来た方が楽しい」

利用者(83)
「お友達と話もできるし。いいよ、ここは。ここがなくなったら困っちゃう」

一人暮らしの利用者も多く、買い物ができるようにと移動スーパーも立ち寄ります。

水落さんは、もうすぐ60歳という年齢も考え、経営はプロに任せて、現場に専念したいと思い、国の委託を受けたセンターに相談。

そこで紹介された仲介会社から、M&Aの買い手として勧められたのがA氏でした。

デイサービス施設運営 水落美香さん(57)
「自分は6社も経営してるんですと。その6社の名前も教えていただきました。こんなに沢山事業をしているのだったら、その一つに加わり、大きくしていく」

この時のA氏の音声が残っています。

A氏
「こちらとしては水落社長さんが現場に集中できる環境を提供する。集中するためにいろんな今までやっていたことは、全部こっちに引き継いでいただいて結構ですので」

水落さん
「わかりました。また全力投球で頑張っていきます」

A氏
「頑張ります。一緒に」

2022年4月、水落さんは、合同会社の出資持分すべてをA氏に譲る契約を結びました。

契約書には、水落さんに500万円を支払うことや、1000万円以上ある借入金の連帯保証を解除すること、水落さんを従業員として雇うことなどが記されました。 

ところが、一部の支払いや連帯保証の解除が行われないまま1年近くが経ち、突然、会社名義のクレジットカードが、利用停止になったと連絡が入りました。

水落さん
「いくら使ってそのエラーが起きて、利用停止になったのかと聞いたら46万円」

明細を取り寄せてみると、A氏にカードを渡したその日に、六本木のキャバクラで17万円。他のキャバクラでも27万円。

水落さん
「一番がキャバクラです。六本木の。もう本当に異常ですよ」
「社会保険料の滞納。ガス代が引き落とされません。もうそれは毎日のようでしたよ」

A氏を問い詰め、会社の銀行口座を確認すると、譲渡した際、800万円ほどあった預金が…

水落さん
「法人口座を開けた時に、残高4000円ですよ。どこに何に使っているのって」

経営を譲った直後の数日間に600万円近くが引き出されていたことや、その後、新たに1000万円の借金をした直後にそのほとんどが引き出されていたこともわかりました。

さらに、毎月の介護報酬を受け取る権利を業者に売って一定額を前払いしてもらう「ファクタリング取引」をして経費の支払いをしのいでいたような実態もありました。

従業員の給料は払えるのかと聞くと…

A氏
「正直、今はもう給料分をどうこうしようという力がなくて、一時的に立て替えてもらえないかなと」

水落さん
「立て替える?」

A氏
「明後日、じゃあ給料払うって言ったところで、どうしようも今できない」

このままでは施設が潰れてしまうと水落さんがA氏に迫ると、A氏は自ら辞任し、その後、連絡が取れなくなりました。

水落さん
「絶対に許せないという思いでしたね。ここまでやってくれたかと」