入管職員が告げた言葉

いま、マウンさんは3か月に1回、「仮放免」の更新のため東京出入国在留管理局(東京港区)に出向いている。
今年8月の手続きの際、入管職員が放った言葉にショックを受けたという。
「6月でルールが変わった。難民申請が3回の人は、すぐに返すことができる。知っていますか?」
今年6月、改定入管法が施行され、3回以上の難民申請者は申請中であっても強制送還が可能になった。だが、軍事政権と少数民族や民主派武装組織との戦闘は激化し、情勢に好転の兆しはない。国軍は徴兵制の実施を発表、国民に武器を向けたくない若者が国外に出るなど離反していると伝えられる。「帰国すれば迫害される」と訴えるマウンさんに、「国に返せる」と言ったのだとしたら、何の意味があるのだろうか。
自分で働いてお金を稼ぎ生計を立てることができない…、それは人としての尊厳を奪われたも同じだ。少林寺拳法の稽古は、先の見えないつらい日々を、ほんの一瞬忘れさせてくれる大事な時間になっている。
マウンさんの仮放免の保証人で、よき理解者でもある先生が語る。
「お国が大変な時期なので、みなさんとコミュニケーションをとって楽しめることが大事だと思う」
「もし在留資格が得られたら…」、そう尋ねると、マウンさんは答えた。
「軍事政権を倒して新しい政府ができるまでには、まだ時間がかかると思う。自動車の整備の専門学校で勉強して、仕事をしながら頑張っていきたい」