難民の「迅速な審査」はどこに…
ミャンマーで軍事クーデターが起きたのは2021年2月。入管庁は同年5月、日本に住むミャンマー人に対する「緊急避難措置」を発表した。ミャンマーの情勢不安を理由に、希望する人には在留や就労を認めることとした。
難民申請者についても「審査を迅速に行い、難民該当性が認められる場合には適切に認定し、不認定でも緊急避難措置として在留や就労を認める」、また「不法滞在中であっても、在留特別許可が相当な方には緊急避難措置と同様の対応をとる」との方針も示した。
入管庁によると、23年12月末までに約1万5000人に「特定活動」の在留資格が与えられた。
ところが、この中にマウンさんは含まれていない。昨年も取材したが、そのときと状況はまったく変わらない。理由は、マウンさんの難民申請に結論が出ていないからだ。
マウンさんが5回目となる難民申請をしたのは22年7月、その年の11月には難民調査官のインタビューを終えた。2年たつが自分の審査はどうなっているのか、なぜ長引いているのか、皆目わからない。
マウンさんは言う。「何もできない。ただ待つだけ。待つしかない」
一体、「迅速に審査」は、どこに行ってしまったのか。
マウンさんが難民認定を求めた裁判で、代理人を務めた渡辺彰悟弁護士(全国難民弁護団連絡会議代表)は「確かにほとんどのミャンマー人が緊急避難措置によって救われたが、忘れ去られたかのような古い申請者がいる。在留資格がないので、本人にとっては非常につらい。放置されていることは、国際法である自由権規約が禁じた“非人道的なもしくは品位を傷つける取扱い”にも匹敵する」と指摘する。
そのうえで「マウンさんは既に裁判まで起こしているので、あらゆる事情を入管もわかっている。結論さえ出してくれればいいだけ」と語った。