夢が幻となった新生吹奏楽部1年目
そもそも吹奏楽は、人数がいないと成り立たない。大所帯であれば、50人以上がステージにひしめき合う。最も少ない場合でも、10人程度は必要だ。人数が少なくなれば、用いる楽器の種類が少なくなり、演奏できる曲のレパートリーが限られてしまう。
当時はコロナ禍で、コンクールは軒並み中止となり、音楽室に集まって練習することもままならなかった。たった3人となった3年生たちは、それでも「高校生活最後のコンクールは絶対に出場したい」と情熱を燃やし続けていた。

金山教諭が顧問に就任してまもなく、新1年生数人が音楽室へ見学に訪れた。正式な入部届をもらう前から、それぞれ別の楽器を割り当て、マンツーマン練習を開始。
「コロナに負けず吹奏楽をあきらめなかった3年生たちと一緒に、コンクール出場を果たしたい」
そんな思いが通じたのか、1年生6人が入部した、その矢先だった。7月後半のコンクール直前、校内で新型コロナに感染した生徒が出てしまった。自由曲を、一曲通しでなんとか演奏できるまでになっていたが、その努力はすべて泡と消えてしまった。すべての部活動が休止となり、新生・広島桜が丘高校吹奏楽部の初ステージは「出場辞退」。とてもやりきれない結果となった。