「3年生の思いを胸に!」2年目の急成長

3年生の夢がはかなく散ったのを目の当たりにした1年生たち。入部したてのころは、音符の長さや音の高低がわからないため、楽譜も満足に読めない初心者ばかりだった。それでも、先輩たちの思いを胸に、練習に励んだ。

金山純也教諭
「猛練習をした覚えは、特にありません。信じてもらえないかもしれませんが。吹奏楽未経験でも無理なく続けられるように活動スケジュールを工夫しました。土曜日は半日練習、日曜日は休みが基本で、平日も休養日を作ってきました。私が指揮して指導するというより、生徒たちと一緒になってサックスやトランペットを吹く。明るく笑いのたえない練習風景が日常でした」

金山教諭は、大人が一緒になって心の底から楽しむ姿を見せること、そして、子どもたちの目に見えない力(=非認知能力)をのばすことが、成長の鍵になるという信念をもっている。
部訓に掲げたのは「やればできる」。実家のある愛媛県松山市の済美高校野球部が、2004年、創部わずか3年目で甲子園初出場初優勝を成し遂げたとき、クローズアップされた校訓だ。4番・鵜久森淳志(日本ハム-ヤクルト)やエース福井優也(早大-広島)が激闘を演じる中、当時大学生だった金山教諭は、仲間とともにアルプススタンドへ応援に駆けつけた。済美高校の卒業生ではなかったが、郷土の球児たちに触発され、懸命にラッパを鳴らしていたという。このとき味わった強烈なインパクトと猛烈な感動が、今に通じる原動力だ。

金山純也教諭
「人間は困難に陥ったとき真っ先にできない理由を探してしまいます。そうじゃなくて、できる方法を模索しようよ、と。廃部寸前の吹奏楽部を盛り上げることはたしかに困難なミッションでした。しかし、私は『やればできる』と自分にも言い聞かせ、覚悟を決めました」

そして、生徒たちの成長スピードは、金山教諭自身の想像をも超えていくことになる。
指導2年目の2022年、初心者からスタートした1年生たちは2年生に。新入部員を合わせた10人で広島県吹奏楽コンクール・高校小編成の部に出場。そこで金賞を獲得し、勢いに乗る。日本管楽合奏コンテスト予選審査会で優秀賞、広島県アンサンブルコンテストでは打楽器七重奏とサクソフォン三重奏の2チームが、金賞をダブル受賞した。